自閉症の子どもを育てている家族の苦労は、それはそれは大きなものです。
- 急に冷蔵庫から食べ物を引っ張り出し、冷たいまま食べようとする。温めてあげようとすると、待てずに泣きわめく。
- 水遊びを始めると、何時間も水道を出しっぱなし。飽きるまでやらせておかないと、夜になって騒ぎ出してしまう。
- 頭に浮かんだ事をすぐに口に出し、「やる」「行く」「買う」と言って聞かない。それが通らないと大声で叫び暴れ出す。
そんなことだけではありません。
一般の人なら、「ちゃんと子どもに教えてあげれば、いいじゃないですか?!」と思うでしょう。
しかし自閉症の子どもは、
- お母さんが叱っても、効果がありません。また、同じことをやってしまいます。
- お母さんが丁寧に説明してあげても、効果がありません。一度納得したと思って、1分も経たないうちに、また駄々をこねます。
- 子どもは理由なく荒れます。お母さんには、どうして子どもが荒れ始めたのか、見当がつきません。
お母さんは、自分が育てられたように、我が子を育てても、上手くいかないことが多いのです。それを誰かに相談しても、一言で「自閉症の子どもはこだわりが強い」と片付けられてしまうこともあります。
自閉症の子どもを育てる苦労を、的確にかつ直感的に言い表す言葉や語彙が存在しないのだと思います。だから、自閉症の子どもを育てているお母さん、すなわち、同じ苦労をしているお母さんにしか、その苦労はわかってもらえません。療育の先生でさえ、24時間子どもと接しているわけではないので、というか、自閉症の子どもと寝起きを共にしたことのある先生は少ないので、その苦労はなかなかわかってもらえません。
ちょっと、乱暴な言葉ですが、私は自閉症の子どものことを「家庭内暴君」という事もあります。
自閉症の子どもは、周りの人に迷惑がかかることを、ちょっと目を離した隙にピやーっとやってしまいます。そのくせ、子どもの身の回りの世話をしてあげてる時は、非協力的でテコでも動かない事もあります。そんな様子を私は、「迷惑秒速・世話牛歩」という事があります。
また、自閉症の子どもは、ちょっとした好みを激しく求めたりします。そして、ちょっとした嫌気を激しく拒む事もあります。普通の子どもなら我慢できるのに、、、。そんな様子を私は、「偏好激求・偏嫌激拒」という事があります。
結局、子どもに関する親の苦労を言い表す言葉がありません。なので、その苦労はなかなか分かってもらえません。
最初の問いに、戻りましょう。
なぜ自閉症の子どもは育てるのに苦労するのでしょうか?
自閉症の子どもだから、常識的に育てても上手く育たない、のではなく、逆転の発想が必要だと思います。常識的に育てても上手く育たない子どものことを、自閉症の子どもという。私は、そう考えた方が、上手く育てられると思っています。
自閉症の研究は世界中の専門家が50年以上も続けています。その研究成果はかなり蓄積されていて、上手く育てる方法はもう出来上がっています。
上手く育てる方法というのは、常識的な方法とか経験的な方法ではありません。自閉症の子供を育てる良い方法は既にあるのです。でも、非常識な方法ではないのでご安心ください。ただその方法は、ちょっと難しくて、私たちが見逃していた方法ばかりです。
自閉症の子どもを育てる良い方法は既にあるのです。
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