自閉症の子どもを育てていく上での困難は、とても沢山あります。そして自閉症の子どもの支援方法も、とても沢山あります。
すると家族は、「どの方法を一番先にやろうか?」、「どの方法が一番効くのだろうか?」、「どの方法が我が子にあっているのだろうか?」と思うのは自然なことです。ストレートに言うと、「どの方法が一番楽で、効き目があるのだろうか?」とそんな方法を探すようになります。
実は優劣に順番があるわけではなく、大別して3つの手法の全てが必要です。
- ABA(応用行動分析)
- スケジュールと視覚支援
- 感覚統合
私は、自閉症と向き合うようになって10年目でやっとこのことがわかりました。
2000年前後は、自閉症の療育手法として10種類ぐらいがあり、それぞれが優劣を競っていたようです。その中でも目立っていたのが、行動療法、TEACCH、感覚統合といったところです。2010年代後半では、療育という言葉が一番上にあり、療育の中に個別の支援方法がある形が普通になってきました。
ちなみにTEACCHは、組織の名前(米ノースカロライナ州立大学TEACCH部)から来ています。TEACCHの手法の中で中心的なものは「構造化」と呼ばれます。構造化の中に、「スケジュールと視覚支援」が含まれます。TEACCHでは、ABAも重要な要素です。
ここで上げた3つの手法は、単独で行うだけではありません。例えば、ペクス(PECS: 絵カードを使ったコミュニケーション指導法)は、ABAとスケジュールと視覚支援の両方の重なった手法です。
その3つをごくごく簡潔に説明すると:
- ABAは、単純なスキルを教える手法です。褒めて育てるのが特徴です。
- スケジュールと視覚支援は、ルールを教える手法です。見せて育てるのが特徴です。
- 感覚統合は、運動機能と感覚機能の弱点に着目した手法です。適度な運動と、刺激の遮断が特徴です。
さて、ここで「エビデンス」という言葉を解説したいと思います。エビデンスとは、科学的証拠があるという意味です。ストレートにいうと、結果が数値として出ている、という意味です。
ABAの専門家たちはエビデンスに拘りました。良い療育成果が出ました。なので、大きく飛躍しました。裏を返すと、結果を測りやすい部分ばかりが整いました。次第に、ABAでは支援できない部分が目立つようになって行きました。
感覚統合の専門家たちは、理論が先行し、エビデンスを軽視していました。数値として結果を説明しにくいので、感覚統合を実践する現場は少なくなってしまいました。その反省もあり、感覚統合はエビデンスを重視しながら建て直されています。
スケジュールと視覚支援は、エビデンスに拘らずにマイペースです。理論は定まっていないけれど、支援成果が実感できる手法です。
食事療法というのが存在します。その中で「グルテンフリー」と呼ばれる小麦を摂取しない支援方法があります。以前の私は、そんな療法をまがいものだと思っていました。食事療法はここでの3大手法の分類では、感覚統合の仲間に入ります。自閉症の子どもは刺激に弱いので、小麦の消化がうまくいかないのでしょう。小麦を摂取しないと、子どもの調子は良くなると思います。しかし、他の支援が必要ないとはなりません。
まとめると、
自閉症の子どもの支援には、3つの療法が必要です。
一つの手法だけで満足しないでください。
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