スケジュール表は、自閉症スペクトラム障害や発達障害を持つ人々にとって、日常生活において非常に役立つものです。1980年代、米国ノースカロライナ大学ティーチ部(TEACCH)で始められたTEACCH療育プログラムは、世界中から注目を集めています。TEACCH療育プログラムは「構造化」と呼ばれる手法で、自閉症の子どもたちの学習や生活のサポートに役立つものです。
その中でも代表的な方法の一つが、スケジュール表です。スケジュール表は、自閉症の子どもたちが日々の行動を自分で認識し、見通しのある日常生活を提供するために使用されます。スケジュール表は、日付、時間、場所、行動、そしてその行動に必要な物をわかりやすく示します。これにより、自閉症の子どもたちが、何をする必要があるか、いつ、どこで、そしてどのように行うのかを理解しやすくなります。
現在では、自閉症の専門家でも誰もが勧める実績のある支援方法となっています。スケジュール表は、自閉症スペクトラム障害や発達障害を持つ人々の生活に大きな支援を提供し、彼らが自分の人生をより自立的に生きることができるようにサポートしています。
なぜ視覚的スケジュールが有効なのか?
自閉症の子どもたちは、見た情報から情報を理解するのが得意です。言葉や音声情報よりも視覚情報を長く記憶しやすい傾向があり、視覚的な手段を通じた情報伝達が有効に働くことが多いのです。この特性を活用した視覚的スケジュールは、以下のような理由で自閉症の子どもたちにとって非常に有効と言えます。
- 見通しの提供: 自閉症の子どもたちは、予測可能な環境と構造化された日常を好む傾向があります。視覚的スケジュールは一日の流れの見通しを示し、その流れがどのように進行するかを明確に示すことで、子どもたちの行動を支援します。
- 自己管理スキルの獲得: 視覚的スケジュールを使うことで、子どもたちは自分で一日の流れを管理する能力を育てることができます。これにより、自立性と自己管理能力が向上します。
- 安定感の提供: 視覚的スケジュールは、何が起こるかを前もって知ることで、不安を軽減します。これにより、子どもたちは日常生活における安定感を感じ、全体的なストレスレベルが低下します。
具体的には次のような効果があります。
- 朝の準備がスムーズ:スケジュール表で「服を着る」「朝食を食べる」「歯を磨く」などの活動の順番を見せます。これにより、子どもは、朝の決まったお支度を自立して行うことができます。
- 学校での落ち着いた行動:学校での一日を示すスケジュール表は、クラスの活動や授業の時間を順に示します。これにより、子供は学校で何が起こるかを予測し、それに合わせて行動できるようになります。
- 予定変更が容易:スケジュール表に「公園で遊ぶ」という予定があっても、雨で行けなくなったとします。そこで絵カードを入れ替えて「家でDVDを見る」という新しい予定を追加することができます。この方法は、子供にとってわかりやすく、自閉症の子供たちもスムーズに受け入れ、新しい予定に適応することができます。
- パニックや癇癪が自然と減少:スケジュール表を使用することで、子どもたちは不安や混乱を感じにくくなります。それにより、パニックや癇癪が自然と減少します。これは子どもたちだけでなく、家族全体の生活の質を向上させるためにも重要です。
- 褒められる機会の増加: スケジュール表を使うと、子どもの行動がスムーズになります。そして、子どもが予定通りの行動をとるたびに、お母さんはその成功を褒めるチャンスを得ます。
以上のように、視覚的スケジュールは自閉症の子どもたちの日常生活をスムーズにし、見通しと安定性を提供する重要なツールです。これを活用することで、子どもたちは自己管理のスキルを獲得し、自己信頼を向上させることができます。
視覚的スケジュールと言葉による支援の違い
見せる支援と言葉による支援では、情報伝達の方法が大きく異なり、その結果として異なる効果をもたらします。
言葉による支援 | 見せる支援 | |
---|---|---|
持続性 | 言葉は一度発せられるとすぐに消えてしまいます。 | 視覚的スケジュールは子どもが何度でも参照できる永続性があります。これにより、子どもは何度でもスケジュールを確認し、自分が何をすべきかを理解するのに役立ちます。 |
具体性 | 言葉は抽象的で解釈が必要な場合があります。 | 視覚的スケジュールは具体的なイメージで提示するため、理解しやすいです。 |
一貫性 | 言葉による指示はその都度変わることがあります | 視覚的スケジュールは一貫した流れと見通しを提供します。これにより、子どもは自分が何をすべきか、そして次に何が来るのかを理解しやすくなります。 |
順番の理解 | 言葉で順番を理解することは難しいです | 視覚的な順番は子どもにとって理解しやすいです。これにより、子どもは順序立てて行動を進めることができます。 |
このような理由から、スケジュール表での支援は言葉による支援にはない大きな効果があります。
スケジュール表を使わないで生活するとどんなことが起こるか?
自閉症の子どもたちはしばしば視覚情報に頼ります。そのため、日々の活動や予定が視覚的に整理されていないと、彼らは混乱したり、不安に感じたりします。以下に、スケジュール表を使わない場合に起こり得る問題をいくつか示します。
- 不安やストレスの増加: 自閉症の子どもたちは予測可能さや一貫性を好みます。彼らが何が起こるかを理解できない場合、不安やストレスが増加する可能性があります。
- 行動問題: 不安や混乱は行動問題を引き起こします。これには、過度の興奮、逆らう行動、自傷行為などが含まれます。
- スキルの獲得の遅れ: スケジュール表は、自立した行動や日々のルーチンを獲得するための重要なツールです。これがないと、スキルの獲得が遅れる可能性があります。
- コミュニケーションの困難: 視覚的スケジュールは、非言語的なコミュニケーションツールとしても機能します。これがないと、子どもが自身のニーズや欲望を表現するのが困難になる可能性があります。
以上のように、スケジュール表は自閉症の子供たちの日常生活をスムーズにし、見通しと安定性を提供する重要なツールです。スケジュール表を活用することで、子供たちは自己管理のスキルを獲得し、自己信頼を向上させることができます。
自閉症の子どもたちとスケジュール表の関係性
自閉症の子どもたちは、自身の頭の中で予定や手順を見通すのが苦手です。この見通しの欠如により、子どもの行動は瞬間的な好みや不快感に左右されがちです。
- 同じ行動を延々と続ける
- やりたくない行動に対しては、頑固に拒否反応を示す
このような行動を修正しようとすると、子どもは強く反発したり、パニックになったりすることがあります。
しかし、頭の中で予定や手順が明確になると、子どもの行動はスムーズになります。「まずは■■をして、次に▲▲を終わらせれば、好きな○○が待っている」という流れが理解できると、子どもは自ら動き出し、自分に求められている行動をこなして、楽しみな事へと進んでいきます。しかし、自閉症の子どもたちは、言葉で指示を与えられても、その指示を頭の中で保持し、行動に移すことがとても困難なのです。
ここで視覚的スケジュール表が役立ちます。スケジュール表は子どもにこれから何が起こり、何をするべきかという見通しを視覚的に示します。これにより、自閉症の子どもたちも自分の頭の中で予定や手順を理解し、それに従った行動を取ることができるようになります。視覚的スケジュール表は、子どもが自分自身の行動を理解し、行動を自発する手助けとなるのです。
スケジュール表を始める前の準備
書籍やセミナーでもよく見るスケジュール表は、簡単そうに見えます。でも、いざ始めようとすると、様々な苦労が現れます。始める前に息切れしてしまわないように、準備の内容を知っておきましょう。
- 最初の絵カードの準備
- 最初のスケジュールボードの準備
- 絵カードは適宜、増やす必要があります
いますぐ手に入るスケジュール表製品
以前までは手作りしか方法がありませんでした。最近では市販品も利用できます。全てが揃っているセット商品もあれば、部分的な商品もあります(一部は手作りが必要)。
- スケジュールポケット(アドプラス)
- スケジュールボードセット(ピラミッド教育コンサルタンツ)
- 巻物カレンダー(おめめどう)
- ビニールポケットカレンダー(アドプラス)
- コバリテ視覚支援スタートキットII(古林療育技術研究所)当社製品