自閉症の子どもは、何かとやらかします。ついつい叱ってしまいます。というか、叱らないとその場をコントールできないので、叱らざるを得ないんですね。そしてまた、子どもは同じことをやらかします。大人は子どもをまた叱ります。
なぜ、自閉症の子ども叱っても効果がないのでしょうか?
もっと正確にいうと
- どうして、健常な子どもは何回か叱ると、その後やらなくなるのでしょうか?
- また、どうして自閉症の子どもは何回叱っても、その後またやってしまうのでしょうか?
そして私たちが知りたいのは、どうやったら自閉症の子どもがそのことをやらかさなくなるのか、ですよね。
今回は、それらを順を追って解説します。
それを解く鍵は、自閉症児と健常児の「見通し」の違いです。また「見通し」かぁ、と思った人もいるでしょうね。でもやっぱり、重要な鍵は見通しなんです。
子どもを叱ると、その時はやめてくれる理由
仮に、子どもが洗面台でずっと水を流して遊んでいるとしましょう。お母さんお父さんにとっては、やって欲しくないことですよね。
子どもが水遊びを続けていると、お母さんに見つかってしまいました。お母さんは、子どもを叱ります。でも子どもは水遊びを続けます。お母さんは叱り続けます。
水遊びをやめると、お母さんも叱るのやめます。子どもは叱られるという嫌なことがなくなるので、水遊びをやめます。その時は。
叱らないで、その行動をやめさせる方法(従来法)
ABA(応用行動分析)と呼ばれる手法があります。動物や人間の行動を変えていく手法です。十数個の手法の塊です。褒める事も一つの手法です。叱ることも一つの手法です。他にもまだまだ手法があります。
叱る手法以外の手法で、その行動をやめさせるのです。代表的には、「消去」とか「代替行動分化強化」などを使います。
従来のABA的手法が効果の薄い理由
ABAの手法の中で、叱る事は強い効果があります。叱ることに比べると、他の手法は効果が弱いのです。弱い手法を使っても、効果が低いのは当たり前ですよね。
それ以前に、子どもにとって水遊びは楽しいことなんです。いつも「楽しい」というアクセルが踏まれています。時々、やめさせる手法でブレーキを掛けたって、ブレーキを緩めるとまた加速されます。
健常児を何回か叱ると、その後、やらなくなる理由

健常児は、何回か叱られると、「水遊びをすると、お母さんに叱られる」という見通しを頭の中に描くようになります。
健常児が洗面台に近寄った時に、頭の中では無意識に自動的に「水遊びをすると、お母さんに叱られる」という見通しが立つのです。叱られるのは嫌なことなので、水遊びを始めません。
ところが、自閉症の子どもは「見通し」を立てるのが苦手です。洗面台に近寄った時に、「やると叱られる」という見通しは立ちません。洗面台を見ると「水遊び=楽しい」というその場だけのことが、頭の中を支配します。だから、お母さんに見つかって実際に叱られるまで、水遊びを続けます。
自閉症児を叱らないで、その後、やらなくさせる方法
自閉症の子どもだって、「やると楽しい」という見通しが立っていると、そっちをやります。ただし、お母さんが言葉で見通しを教えてあげても、子どもはその見通しを頭の中に保持できません。
ところが、見せてあげた見通しは、きっちり理解できます。たとえ喋れなくても、重度の自閉症の子どもで、見せてあげた見通しは理解できます。
洗面台には、イラストで
- ×洗面台で水遊び
- ○リビングでおもちゃ遊び
を見せてあげてください。
自閉症の子どもは、見せられた見通しが優先します。だから、叱らないでも、リビングでおもちゃ遊びに誘導されます。
まとめ
ポイントは、
- お母さんにも迷惑でない。
- 子どもも楽しい。
という、良い見通しを見せてあげることです。
見通しは言葉で教えてあげても、子どもは頭の中に保持できません。見通しは必ず見せてあげてください。
良い見通しに誘導する機会が増えると、やって欲しくないことは少なくなります。
そして、叱って子どもをコントロールする場面も減っていきます。
コメント
小3の自閉症児の育児に疲れ果てております。少し読ませて頂きましたが、とてもいいサイトにたどり着くことができたとすぐにわかりました。今日はもう遅いので、明日から夫と一緒に読んで勉強します。
なるさん
こんにちは、古林です。
自閉症のお子さんの育児は大変ですよね。その状況はよくわかります。
自閉症の子どもの支援は、長期戦です。
ゆっくりでいいので、適切な知識を増やしてください。
そして初歩的な支援を始めて、それを継続してください。
必ず、穏やかな生活がやってきます。