自閉症とは

自閉症の概要

自閉症とは、先天性の脳機能障害で、

  • 社会性の発達障害
  • コミュニケーションの障害
  • 活動と興味の偏り

の症状が見られます。

生後は一見普通ですが、2〜3歳で特性が目立ち始め、3~4歳頃に診断が確実になります。

自閉症の原因は未だに不明で、1940年代は「親の愛情不足や誤った育児法など」の心因説が主流でした。現在では心因説は否定され、脳機能障害説が主流となっています。

従来は、「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」と区別されていましたが、2013年ごろから、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」へ定義が拡大しています。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率は約1%と言われ、男女比は4対1で男性の方が多いとされています。

自閉症とは 特徴 アスペルガー障害 自閉症スペクトラム障害

世界中の専門家による自閉症児の療育の研究には50年以上の歴史があります。自閉症を治す方法は見つかっていませんが、2000年には効果的な療育方法が確立しています。

療育手法の代表例には、

があります。

自閉症の特徴

  1. 社会性や対人関係の問題
    幼児期の特徴として、泣いたり笑ったりすることがほとんど無い、人と目を合わせようとしない、名前を呼んでも振り向かないや、友達を遊ぶよりも人で遊ぶことを好みます。
    それ以降では、対人関係が苦手、相手の気持ちがわからない、人とトラブルになりやすいという特徴があります。
  2. コミュニケーションの問題
    幼児期には、言葉の発達に遅れがあったり、言葉で要求するのでは無くお母さんの手を掴んで欲しいものを取らせる行動(クレーン現象)がしばしば見られます。重症の場合、言葉を話すことができないこともあります。
    また、言われたことをオウム返しにしたり、状況にそぐわないことをペラペラしゃべったりします。言われたことを言葉どおりに受け取ったり、冗談や皮肉がわからないのも特徴の一つです。
  3. 想像力の問題と活動の偏り
    活動範囲や趣味の対象が狭く、体を揺らしたり、回ったり、手をひらひらさせたり、と言った繰り返し行動やこだわり行動が見られます。
    関心のあるものには集中しますが、目の前にないものの理解が苦手です。

それ以外の自閉症の特性として以下のものがあります。

  • 人の気持ちを読むことができない(心の理論の障害)。
  • 代名詞や曖昧な言葉がわからない。
  • 突然の変化が苦手である。
  • 急にパニック(癇癪、泣きわめき、暴れ、自傷行動、他害行動など)になる。
  • 感覚機能がアンバランスで、とても苦手な刺激もあれば、鈍感な部分もある。
  • 規則的なこと、記憶的なこと、視覚的なことに特別な能力を発揮する。

しかし、自閉症の子どもを育てているお母さんが経験する苦悩は、このような特徴では言い表すことがでないかもしれません。

自閉症の原因

自閉症の原因は、先天性の脳機能障害とする説が有力ですが、まだ完全には解明されていません。

1943年 レオ・カナー(Kanner)が「情緒的接触の自閉的障害」で初めて症例を報告しました。それからしばらくの間は、自閉症の原因は、「情緒障害説」や「親の愛情不足や誤った育児法などの心因説」が主流を占めていました。1968年にマイケル・ラター(Rutter)が初めて脳障害を原因とする説「言語認知障害説」を唱えます。

脳神経医学の発達により、2000年頃には自閉症の原因は先天的な脳機能障害であることがほぼ確実になりました。

自閉症から自閉症スペクトラム障害(ASD)へ

従来は、自閉症の特性を持つ子どもを知能指数や話し言葉の発達度合いによって、

  • 自閉症(従来のカナー型自閉症)
  • 高機能自閉症
  • アスペルガー症候群

に分類していました。

2013年に国際的な診断基準となっているアメリカ精神医学学会(American Psychiatric Association)の発行する DSM (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)が第5版に大幅改定されました(DSM-5)。

DSV-Ⅳでは、自閉症、アスペルガー症候群などが区別されかつ広汎性発達障害(PDD)としてまとめられていましたが、DSM-5ではその区別をなくして、自閉症の特性を持つ連続体(スペクトラム)として捉える「自閉症スペクトラム障害(ASD)」(または「自閉スペクトラム症」と呼ばれる)、という診断名に統一されました。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率

自閉症は、以前は小児1万人につき4〜5人と言われていましたが、1980年代よりそれよりも多めの調査結果が出るようになってきました。それぞれの疫学的調査は方向が異なるので一律な比較はできないものの、自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率は約1%というのが米国をはじめ各国での共通認識となっています。

国内において全国レベルの調査はほとんどなく、本田らの2005年の論文では、横浜市の自閉症の発生率が 0.27%という推計値が報告されています。

米国の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)が自閉症・発達障害モニターネットワーク(Autism and Developmental Disabilities Monitoring Network: ADDM) による2010年のサンプリング調査では、自閉症スペクトラム障害(ASD)の有病率は68人に一人、平均有病率1.47%と推計されています。この数字は2000年から2倍に増加しています。

いつ頃から自閉症とわかるのか?

自閉症の子どもは生後すぐには、健常な子どもと変わりがありません。しかし、お腹が空いてミルクが欲しいときや、オムツが気持ち悪くて替えて欲しい時に、自閉症の赤ちゃんはあまり泣かなかったりします。一人でベッドに寝かされていても長い間おとなしくしてます。そのため親は、我が子のことを、育てやすい子、手のかからない子と感じることがあります。

2歳頃から、他の子どもと比べて育ちが遅いことに気付き始めます。このころは喃語が出たり、「ママ」「パパ」と一言ふたこを喋り始めるのですが、自閉症の子どもは言葉の遅れが目立ち始めます。また、子どもの名前を呼んでも振り向かないといった様子も見られます。誰かと遊ぶよりも一人で遊んでいたり、特定のおもちゃに固執したりします。人と目を合わせようとしないのも自閉症の子どもの特徴です。夜に眠らない、偏食が激しい、といったことも出てきます。

だんだんと健常な子どもとの違いが大きくなるので、専門医に相談に行ったり、三歳児健診などで、3歳頃には自閉症の可能性が強くなり、自閉症の診断が確定したりします。この頃には、言葉の遅れがある、周りの人との交流が少ない、特定の物へのこだわりが強い、癇癪を起こしたりパニックになることがしばしばあるなどの、共通した特徴が見られます。

参考文献

[1] 「じょうずなつきあい方がわかる自閉症の本」、佐々木正美監修、主婦の友社刊行、2009年3月発行。
[2] 「じょうずなつきあい方がわかる自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の本」、宮本伸也美監修、主婦の友社刊行、20015年8月発行。
[3] 「発達障害白書2016年版」、日本発達障害連盟編、明石図書刊行、2015年9月発行。
[4] Honda H, Shimizu Y, Imai M, & Nitto Y : Cumulative incidence of childhood autism: a total population study of better accuracy and precision. Developmental Medicine & Child Neurology, 47 (1): 10-8, 2005.
[5] Autism Spectrum Disorder (ADS), Centers for Disease Control and Prevention, http://www.cdc.gov/ncbddd/autism/addm.html

 

 

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