自閉症の絵カードの昔と今

自閉症 絵カード 絵カード

思い起こせば、私が自閉症支援の絵カードを知ったのは、三男君が4歳の頃だったと思います。三男君は現在21歳だから、もう17年も絵カードと付き合っています。1万枚には達していないけど、千枚二千枚はとうに超えています。日本で絵カード作りに長けてる家庭のトップ10には、我が家が入っていると思います。

絵カードと聞くと、喋れない子どもの為と思う人も多いと思います。そうではなく、喋れる子供にも絵カードは必要なんです。それはさておいて・・・

時代時代で、絵カード作りの状況は変わっています。その17年の記憶を振り返ってみようと思います。

最初は普通の写真から始めた

我が家の三男君が4歳の頃だと思います。三男君は喋れません(今も喋れません)。私がどこで習ったはもう忘れましたが、トイレとかお風呂とか食卓の写真をデジカメで撮って、自宅のプリンターで写真を印刷。

2005年頃、デジカメはもう普及していました。ケータイの写メ機能はもうあったと思います。スマホはまだ無かった時代です。

トイレとかお風呂の写真を見せて、生活行動を誘導していました。最初の1週間はうまくいき、楽になりました。でも、2週間目あたりから、写真を見せても誘導できな状況に。

それでも、初めて三男君を連れて行く場所がある時は、私か家内がその場所を下見して、デジカメで撮影。三男君を連れて行く直前には、その写真を見せる。これは結構役立ちました。

PECSを始めて、絵カードが絵カードになった

三男君が7歳の頃、私も家内もPECS(ペクス)を習いました。PECSとは絵カードを使って、自閉症の子どものコミュニケーションを支援する方法です。

PECSで最初に使う絵カードは、食べ物やお菓子です。家にある食べ物やお菓子をデジカメで撮影しました。

PECSの絵カードは正方形で、標準的な大きさは、45 x 45 mm、35 x 35 mm、25 x 25 mmです。PECSを薦めてくれた専門家が、「小さい方がいいよ」と言っていたので、我が家では 25 x 25 mm サイズで始めます。

ところが、その絵カードを作るのに一苦労。エクセルを使って、写真の割り付けレイアウトが必要。たった20枚の絵カードなのに、作るのに2週間かかりました。

その絵カードは、マグネットシートでくっつけるようにしました。構造的に、全然役に立たず。そして作り直し。皆さんがよく使う、ラミネート加工してマジックテープを使う絵カードです。ラミネーターやマジックテープを買ったりもあり、出来上がったのは1ヶ月後でした。

絵カードが増えると、イラストデータがどんどん必要に

絵カードに慣れてくると、新しい絵カードが欲しくなります。デジカメで撮影できない内容も結構あります。なので、イラストを調達しないといけない。

2008年ぐらいの状況です。その頃既に自閉症の子どもの為に絵カードを作る人は、結構いました。中には、我が子用とか支援している子供用に作った、絵カードのデータを無料でインターネット公開している方が、いたんです。米国の方が多かったです。

こんなシートがダウンロードできます。印刷して、切り離して、補強加工すれば絵カードとして使えます。でもこのイラスト、とても米国の癖が強いですね。

日本の方も、無料公開している人がちらほらいらっしゃいました。種類が少なかったり、癖があったり。

有料の絵カードデータも現れる

一つ目は、「Board Maker」(ボードメーカー)と呼ばれる、Windowsのソフトです。米国のソフトです。当時のバージョンで、3万円程度、現在のバージョンで5万円ほどします。イラスト数は、4,000点程度。

2つ目は、PICS FOR PECS 「絵カードデータ集」CD。CD-ROMに入った、イラスト集です。こちらは、PECSを開発したピラミッド教育コンサルタントが販売しています。版を重ねて現在15版。価格は、3,500円。(初期のバージョンは、7千円ぐらいした記憶があります)。イラスト数は、1,200点。キャプションは日本語化されています。

私は、Board Makerは買っていません。PICS FOR PECS 「絵カードデータ集」は、持っています。新しい版が出るたびに、大体は買っています。でも、ほとんど使っていません。

Googleの画像検索が逸品

今では、画像検索が一般的ですね。しかし2008年当時、技術的に画像検索はありましたが、精度が良くなく、その存在を知っている人も少なかったと思います。

でも、私は気づきました。画像検索により、選り好みしなければ、欲しい絵カードは何でも手に入ります。重宝しましたよ。今でも重宝しています。この画像検索のおかげで、三男君を始めて連れて行く時に、下見の必要がなくなったんです。行ったことのない場所の写真が自宅にいながら手に入りますから。

iPhoneが状況を一変させる

2010年頃だったと思います。iPhoneが発売されて数年後だと思います。iPhone 3GS がヒットし、日本にスマホが普及し始めました。

そして、絵カードアプリの登場です。

一つ目は、voice4u。米国シリコンバレーに住む、日本人のお母さんが、我が子用に企画し、米国の技術者と一緒に作ったスマホアプリです。宇宙人のようなキャラが特徴です。

上の画像は、voice4uの現在の画像です。(リリース当時の画像ではありません)

2つ目は、DropTalk。長野県の特別支援学校の青木先生が企画、竹内先生がイラスト担当。アプリ会社HMDTが開発したものです。

このDropTalkの画面は、当時のものです。(現在TropTalkは、HDMT単独版となっています。青木先生竹内先生版は、現在TropTapというアプリになっています。)

iPadが発売されると、日本でのスマホが普及がどんどん進みます。その結果、特別支援分野でのICTへの期待が沸騰します。

アプリを使わなくても、スマホに写真を撮りためておいて、必要な時にスマホで写真を見せるという使い方が出来る用になりました。

ラミネーターを用いた面倒な絵カード作りが必要ない、という期待から、多くの人がICT型の絵カードに注目します。自閉症支援での、絵カードの認知がグッと高まった時代です。2014年頃だと思います。

しかし、絵カードのICTブームはそう長くは続きません。自閉症の子どもを支援するのは、やっぱり人なんです。支援方法を知らない人が、ICTを使っても、うまく行かないというのが、徐々にわかり始めます。

無料の自閉症絵カード・ダウンロード、2強時代

2016年頃です。自閉症の支援に専用に使える絵カードデータで、無料ダウンロードできて、しかもまとまった数の揃っているセットは、ほぼ2つに集約されました。

一つ目は、Drops。先の青木先生のプロジェクトが無料公開している、イラスト集です。(彼らは、シンブルと呼んでいます)。実はDropsの歴史は長く、少しづつイラストの数が増えています。現在、1,300点程度。これからも増えるでしょう。特別支援学校でもよく使われています。

二つ目は、コバリテ・イラスト。2強と言うには、手前味噌ですね。私の会社で提供している「コバリテ視覚支援スタートキット」で採用している絵カードのデータです。それを無料ダウンロード公開しました。(現在は、個々のイラストの直接ダウンロードはできません。割り付けデータとして、無料ダウンロードできます。)現在のイラストは、300点程度。

再び、絵カードのイラストは混沌とした時代へ

2020年には、もう絵カードに使うイラストは、色々あるんです。自閉症の支援向きだけではありません。

フリーサイトで、一般のイラストが簡単に手に入ります。「イラストや」さんもそうです。無料・イラスト・ダウンロード、で検索すれば、よろどり緑です。

自閉症の子ども向けに特化した、イラストも結構見つかります。概して、セットとしての数は少ないですけど。

重要なのは、イラスト収集ではなく、絵カードを使うときの形態なんです。データがあっても、絵カードにしなければ、支援になりません。

家庭の環境は昔とは変わりました。パソコンやプリンターの無い家庭も増えてきました。iPadやスマホがあれば、普通の生活は事足りますからね。そして、エクセルを使いこなせるお母さんは減ってきました。100円ショップに行けば、家庭生活にすぐ使える便利グッズが、五万とあります。

そんなこんなで、多くの人が、工作や手作りが下手になってしまいました。

メルカリを探せば、自閉症向けの絵カードを手作りして売っている人が、たくさん見つかります。たとえ買ったとしても、全ては揃いません。自分の子供だけに必要な絵カードは、やはり自分の手で作らなければなりません。自作する絵カードの方が重要だったりします。

Drops(ドロップス)さんは、イラスト増やしではなく、iPad利用に主軸を移してしまっています。

私はというと、絵カードそのものではなく、ここ数年はスケジュール表の普及に力を入れていました。というか、絵カードセンターを独立させて、安心しきっていました。そして、私の頭の中から、絵カードのことが手薄になっていたのです。

もう、絵カードを取り巻く状況は混沌としている様相です。

そろそろ、自閉症の子どものための絵カード作りの再整理が必要な頃だと感じて、この記事を書きました。

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