自閉症のお子さんを連れて、療育センターや児童発達教室に通い始めると、お母さんやお父さんは初めての事ばかりに接します。既に療育を受けている他のお子さんを見ると、絵カードを使って指導の先生と一緒に何やらやっています。
お母さんやお父さんも、臨床心理士(PT)や言語聴覚士(ST)の先生から、家庭での支援について色々指導を受けるでしょう。
自閉症のお子さんが喋れない場合、必ずと言っていいほど、「家庭でも、PECS(ペクス)とスケジュール表をやってください。」とアドバイスされます。
では、PECS(ペクス)とスケジュール表、家庭ではどちらを先に始めるべきでしょうか?
PECSとスケジュール表は、 遅かれ早かれ、両方必要です。
PECSとは、「絵カード交換式コミュニケーションシステム」の略称で、「ペクス」と言います。自閉症の子どもが絵カードを使って、お母さんに自分の欲しいものを要求する、という使い方をします。

スケジュール表は、絵カードを使って、(その名の通り)これからの予定(スケジュール)を、お母さんが子どもに見せて、子どもがすべき事を促す、という使い方をします。

どちらも、コミュニケーションの支援です。コミュニケーションって双方向ありますよね。
- 子ども → お母さん(お父さん)
- お母さん(お父さん) → 子ども
前者は「表出」と言われ、PECSで行います。後者は「受容」と言われ、スケジュール表で行います。
子どもが生活していく上で、表出も受容も両方必要です。だから、遅かれ早かれ、PECSとスケジュール表は両方必要になります。
理想的には、PECSが先です。
喋れない自閉症のお子さんの場合、3歳4歳5歳となっていくと、荒れたり、癇癪を起こしたり、パニックになることが多くなります。主な原因は、自分の欲しい食べ物や飲み物を要求できない事です。そんな場合、子どもは荒れざるを得ません。
PECSは、絵カードを使って、子どもが要求する力を育む方法です。子どもが、要求する力をつけていくと、生活はかなり安定します。だから、まずPECSを始めるべきです。
自閉症の専門家も、まずPECSを始めることを勧めます。
理想よりも、とにかく始めることが重要。
PECSは簡単に見えますが、お母さんに相当の知識と、かなりの準備が必要です。その知識をお母さんがつけるには、講習会2日(スライド100枚、テキスト200頁)の勉強が必要です。また、準備として絵カードを作らなければなりません(最初は2枚くらいで初めて、すぐに数十枚の絵カードが必要になります)。(PECS講習会の詳細は、ピラミッド教育コンサルタント社のホームページをご覧ください。)
お母さんが見様見真似で絵カードを使っても、子どもは習得できません。
スケジュール表は、お母さんに少しの知識と、かなりの準備が必要です。見様見真似でもある程度は、スケジュール表を教えることができます。しかし、スケジュールボードと絵カード(最初は10枚程度)の準備が必要です。1枚でも絵カードが不足すると、スケジュール表の効果はありません。
どちらも、始めるハードルが高いのです。
- PECSのハードルは講習会への参加。
- スケジュール表のハードルはその準備。
このハードルが越えられなくて、子どもの支援ができていない家庭が多いのも事実です。
だから、お母さん(お父さん)ご自身のハードルが低い方から、始めるべきです。
一方を初めて、お母さんも子どもも慣れた頃に、もう一方を始めるのは比較的楽です。
まず始めるなら、コバリテのスケジュール表
当社が提供している「コバリテ視覚支援スタートキット」は、自閉症の家庭向けに考えられた、スケジュール表&絵カードセットの製品です。

スケジュール表を始めるのに必要なものが、初めから揃っています。だから、届いて直ぐにご家庭で支援を始められます。始めるハードルがとても低い製品です。
もしも、どちらもやらなかったら?
ご家庭にPECSもスケジュール表も無いとすると、生活はどんどん荒れていきます。パニックや癇癪が増えていき、自傷や他害も出てくるでしょう。
まとめ
喋れない自閉症のお子さんの場合、遅かれ早かれ、PECSとスケジュール表は両方必要です。
始めやすい方から始めましょう。
両方を一度にスタートすると、お母さん(お父さん)の負担が大きすぎて、支援が頓挫しますよ。ご注意ください。
自閉症の子どもの支援は準備が9割
古林紀哉
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