視覚支援の概要
視覚支援は、1960年代の半ばに、米ノースカロライナ大学のエリック・ショプラー教授のグループによって始められたTEACCHプログラムで提唱された構造化という考え方の別名でもある。TEACCHの構造化では、子どもが目で見て行動できるように「視覚化」ことが中核になっているので、視覚支援とも言われる。(「視覚的支援」と呼ばれることもある。自閉症療育の分野では、視覚的支援と視覚支援は同じ意味で用いられる。)
視覚支援の代表例はスケジュール表であり、毎日の生活や学校での学習時間割を作成し、視覚的なスケジュール表として前もって示すと、自閉症の子どもは不安や混乱が少なくなり、情緒が安定する。
自閉症の子どもはいつもと違う予期しない状況に遭遇すると、恐怖や困惑を示すことが多い。スケジュール表を、家庭内のよく通過する場所や、学校の自分の机の上または自分のロッカーの扉などに掲示しておくと生活が安定し、学習効果も大きくなる。言葉や文字が理解でいない自閉症の子どもの場合、スケジュール表ではイラストや写真を使った絵カードが用いられる。
自閉症児者の用いるスケジュール表では、個々の行動予定は、文字カードや絵カードのようにカード化され、縦一列にボードに貼られる。また、その行動予定が終わった時に、ボード上からカードを取り外せるような工夫がされているのが特徴である。
視覚支援のスケジュールは、1日のスケジュールだけでなく、週間カレンダーや月間カレンダーのように時間の枠を広げたものも含まれる。
このような視覚的なスケジュールを用いると自閉症の子どもは、「今何をすべきか」「次は何をすべきか」「最後までにはどれだけ残っているか」を理解しやすくなる。そのため子どもの不安や混乱が少なくなり、パニックや癇癪が少なくなることも期待できる。
スケジュール表の利用は、言葉をしゃべることができない自閉症児のみならず、読み書きの出来る自閉症児に対しても有効な支援ツールとなっている。