「お支度ボード」を自閉症の子供に使ってはいけない3つの理由

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「お支度ボード」を知っていますか?

2016年の初め頃から、インターネットのブログや記事で流行り始めました。

「お支度ボード」というのは、幼稚園の子供向けのツールです。
お母さんが手作りをします。
そして、子供の朝のバタバタが解消されるんですね。
子供は自分で朝のお支度を楽しむようになります。
お母さんが一々指示することもなくなります。

子供にもお母さんにも、とっても強い見方ですね。

しかし、「お支度ボード」を自閉症の子供に使ってはいけません。自閉症の子供とお母さんにとって、「お支度ボード」はスケジュール表の粗悪品です。

その理由は

  1. 自閉症の子供は「お支度ボード」を上手く使えません。
  2. 正しいスケジュール表の効果を鈍くしてしまいます。
  3. お母さんはスケジュール表の効果を軽視するようになり、見せる支援をしなくなります。

では、「お支度ボード」を解説しましょう。

手作りなので、いろんなバリエーションがありますよ。

インターネットで「お支度ボード」を画像検索すると、たくさん出てきますね。お母さんたち、いろんな工夫をしています。

お支度ボード

単純で一般的なのは、市販の家庭用ホワイトボードを使います。絵カードは市販のマグネットシートを4cm程度の大きさに切って作ります。両面に書けるマグネットシートが人気です。切り離したマグネットシートにペンで文字やイラストを描くと絵カードが出来上がります。絵カードの内容は、「といれ」、「おきがえ」、「あさごはん」、「はみがき・かおあらう」、「わすれものちぇっく」などです。絵カードの裏には、「よくできました」と書いておきます。

使い方は、

まず、ホワイトボードに絵カードを貼っておきます。

あとは、絵カードに書かれた支度が1つ済むと子供が絵カードを裏返します。

すると「よくできました」が出てくる具合です。

「お支度ボード」の効果は、子供が自分で支度を進めることができることです。子供は楽しみながらできます。お母さんは、一々指示を出す必要がありません。

使い方と効果は、自閉症の子供の療育で一般的な「スケジュールと視覚支援」と同じです。

「スケジュールと視覚支援」は重度の自閉症(発達障害、知的障害)の子供にも効果があります。だから、健常な子供だったら、もう効果てき面ですよね。私たち大人だって、業務で手順書やチェックリストを使いますよね。

「お支度ボード」は幼稚園の子供に効果が出て、当たり前なんです。

1)自閉症の子供は「お支度ボード」を上手く使えません。

皆さんは知っていますか?

自閉症の子どもは手先が不器用です。

自閉症の子どもの療育に携わっている人なら、このことは常識的に知っています。

「お支度ボード」の絵カードは、マグネットシートですよね。マグネットシートはボードにピッタリくっつきます。隙間がないので、大人でも剥がすときにストレスを感じます。自閉症の子供はマグネットシートをうまく剥がすことが出来ません。

一般的な「お支度ボード」と同じように、私がモデルを作ってみました。

マグネットシート式 絵カード

自閉症の子供が使うスケジュール表の絵カードでは、マグネットシートは使いません。

マグネットシートは役に立たないんですよ。通常は、ラミネートで補強した絵カードにマジックテープを貼り付けて使います。

マジックテープ式 絵カード

「絵カードを裏返さなくても、見せているだけで役にたつ」とお思いですか?

甘い!
「自閉症の子供は、一度に多くの物を見たときに、どこに注目するか」がわからない。というか、どこに注目するか私たちでは予想がつきません。

自閉症療育の分野では、どこに注目するかを単純なルールで教えるんです。順番は、上から下へ。または、左から右へ。だから、「一番上を見なさい」、「一番左を見なさい」とね。終わった活動は、スケジュール表から取り除くのです。(取り除かなくても、終わったことが見てはっきり区別できれば、それでも構いません。)

も一度いいます。

自分で終わったものを、順序よくハッキリさせることが出来ないグッズは、
使い物になりません。

自閉症の子供は2〜3日もたつと、「お支度ボード」を使わなくなるでしょう。そして、「お支度ボード」は単なる掲示物か置き物になってしまいます。

2)正しいスケジュール表の効果を鈍くしてしまいます。

「お支度ボード」は、自閉症の子供にとって、曲がりなりにもスケジュール表です。

自閉症の子供は、スケジュール表にきっちりと従います。スケジュール表を正しく使えばですけどね。そして、健常児よりもきっちとスケジュール表に従います。(その理由は、ここでは説明しません。)

使い物にならない、スケジュール表を見せられていると、自閉症の子供は、スケジュール表全体を無視するようになっていきます。脳がスケジュール表を無視するようになっていくのです。

スケジュール表というのは、自閉症の子供の小さい頃から将来にわたって、
大切な支援ツールなのです。

使わないスケジュール表を置き続けることは、子供にとって大きな損害ですよ。

3)お母さんはスケジュール表の効果を軽視するようになり、見せる支援をしなくなります。

「お支度ボード」を作っても、子供の役に立たなかったら?

見せる支援は、我が子には合っていない、と考えるようになります。本当は、「お支度ボード」というグッズが粗悪品なんですけどね。

ある時期に、自閉症療育の指導者に、スケジュール表を勧められるでしょう。その時にお母さんは、「一回やってみたけど、我が子には合いません。」と考えます。

自閉症の療育の世界でも同じことが起こっています。
スケジュール表を使っても、子供は動きません」と言っている指導者が結構います。そんな人のスケジュール表を見せてもらうと、、、、マグネットシートで作っていました。

見せる支援をしてこなかった自閉症の子供は悲惨ですよ。生活スキル、自立スキルがつきません。不適切な行動も多く出てきます。家庭もグチャグチャになります。

「お支度ボード」の実績は?

「お支度ボード」は見栄えがいいですよね。
健常児に使うと、役に立ちますよね。

でも普通のお母さんが、ちょっと工夫して、作ったにすぎません。こんな良いグッズを作ったのでブログで紹介しているにすぎません。それを見た他のお母さんが、見栄えの点で、改良して、またブログで紹介しているにすぎません。

「お支度ボード」はこの1年間の10人ぐらいの試行錯誤にすぎません。

自閉症の子供向けのスケジュール表には20年以上の実績がある

自閉症の子供の療育の世界では、40年も前から、スケジュール表が有効なことが知られています。日本でも、20年前には、スケジュール表が使われ始めました。10年前には、自閉症の子供のお母さんたちは知るようになりました。

やり方は簡単に見えるでしょ。でもね、、、いろんな試行錯誤と失敗を繰り返してきたのです。そして、現在の自閉症入門書で解説されているようなスケジュール表になったのです。

スケジュール表と絵カードの作り方と材料も、20年以上、皆さんが試行錯誤してきました。マグネットシートの絵カードが使えないことも分かっています。ラミネートで補強した、マジックテープを付けた絵カードが使いやすいことも分かっています。欲を言えば、厚みがあって質感のある絵カードが良いことも分かっています。そんな絵カードを作るのに、皆さん大変な苦労をしてきたのです。

「自閉症の子供向けのスケジュール表」は、20年もの間、1万人以上の人が改良して、改良して、改良して、出来たもなのです。

自閉症の子供のお母さんがするべきこと

自閉症の子供向けのスケジュール表を使いましょう。

ネット業界に一言言いたい

子育てママ向けにコンテンツ発信をしている編集者の方へ:

  • 「見せる支援」がお子さんの役に立つことを広めてくれてありがとう。

発達障害関連のコンテンツ発信をしている編集者の方へ:

  • 「お支度ボード」という粗悪品の情報を広げないでください。粗悪品の情報が子供と家族を不幸にします。
  • 「スケジュールと視覚支援」という基本的な情報を発信してください。

実際にお支度ボードを作ったが、直ぐに使わなくなった保護者もいらっしゃいます。

自閉症の子供を持つ父親より
古林紀哉