自閉症の子どもに何かのスキルを教えた時に、人が変わるとできないのはなぜ?(その2:嫌子出現の阻止による強化)

その人が近くにいるときは、子どもはチャンと出来るのに、他の人だとなかなかやらない!

そんな状況はよく起こります。

Aさんが子どもに何かのスキルを教えたとしましょう。今回のスキルは、生活スキルであったり、まあ、お作法的なスキルのことが多いです。例えば、手を洗う、物を決められた場所に置く、お片づけする、、、などなど。

もしもAさんが、学校の先生、療育の先生などの指導を職業としている人だと、、、タチが悪いです。他の先生の時は、子どもはやらないので、他の先生から見たらAさんは上手な先生に見えます。Aさん自身も「私は指導が上手だ!」と勘違いします。Aさんは、自分がいない時に、子どもがちゃんと出来なくても困らないのです。子どもが下校または降園した後は、Aさんの責任範囲ではありませんからね。

しかし、子どもの親はそれでは困るのです。

Aさんが、自宅まで来て面倒見てくれることはないですからね。

親としては、親と一緒にいる時もそのスキルが出来てほしいし、親がいない時でも、そのスキルが出来てほしいのです

なぜ、Aさんが教えて、Aさんが近くにいるときは、子どもはちゃんと出来たのでしょうか?

Aさんが子どもに教えました。教えた時には、指示を出したり、手添えで一緒にやってあげたりしたと思います。いわゆるプロンプトですね。何度も同じ練習をして子どもは出来るようになったので、そのスキル自体は身につけました。

子どもが自発的にそのスキルをやるところまでは来ていません。Aさんは子どもに指示を出します。もし、子どもがやらなかったら、Aさんはまた指示を出します。子どもがやるまで、指示を出し続けます。(時には、Aさんは怒り出すかもしれませんね。) 子どもはその指示が嫌なんです。子どもにとっては、このままだと嫌なことが続くので、しぶしぶそれをやるわけですね。もう一歩進むと、Aさんが近くにいると、そのうち嫌な指示が出てくるので、指示が出る前に、子どもはそれをやります。

そんな状況は、ABA(応用行動分析)の専門用語でいうと、「嫌子出現の阻止による強化」が起こっている状況です。

(Aさんはいなくて)Bさんが近くにいるときは、Bさんは弱い指示しか出しません。Bさんは怒り出したりもしません。すると子どもは、嫌な指示は出てこないので、そのスキルを自発しないのです。

このような時、多くの人は、「プロンプト依存」とか「指示待ち人間」などの言葉で表現します。(子どもにとっては、失礼な言い方ですよ。あんたの教え方が身勝手なので、子どもがそうなったんですよ! と、私は言いたいですね。)

ほとんどの人は、子どもに指示を出して、子どもが行動した後に、ほったらかしにしてます。子どもが行動した直後に、子どもを褒めていません。行動の直後に褒めないと、本当に指示に依存します。

行動の後に褒めていると、その行動は自発するようになっていきます。

そんな状況は、ABA(応用行動分析)の専門用語でいうと、「好子出現による強化」が起こっている状況です。これが最も基本的な支援です。

褒めることで、行動を強化していると、子どもの自発は増えていきます。すると、指導者が指示を出す必要性が減っていきます。自然に、プロンプトの量が減っていくのです。正しい強化(褒めること)が、プロンプトを減らす唯一の方法です。

指示を出して、子どもが行動したら、直後に必ず褒めましょう!

そうしていると、特定の人が近くにいないと出来ない、という状況は少なくなっていきます。子どもの自発を引き出すためには、とにかく、行動の直後に褒めることです。

 

視覚支援で子どもは成長します!
古林紀哉

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