自閉症の支援で、なぜスケジュール表は軽視されるのか?

スケジュール表

自閉症の子どもの療育では、「スケジュールと視覚支援」が絶大な効果を上げているにもかかわらず、スケジュール表は軽視されています。自閉症療育の専門家でさえ、自宅でスケジュール表を使うことを強くは進めていません。とても残念なことですが。

考えると「スケジュール表を自宅で使う」ことに踏み切れない事には、大きく分けて3つのハードルがあります。

1番目のハードル「なぜ、スケジュール表が良いのかわからない」

  • スケジュール表を使うと自閉症の子どもが、きちんと行動できるということは、医学生理学的にはまだ解明されていません。
  • スケジュール表に自閉症の子どもがきちんと行動できる仕組みは、モデル化がされていません。

これまで説明されているスケジュール表が効果を出す理由は、「見通しがハッキリする」という程度です。

「スケジュール表を使うと、本当にパニックや癇癪がなくなる」ということを知っているのは、ほんの一部の人に過ぎません。

簡単に見える物(スケジュール表)で、大きな課題(パニックや癇癪)を解決できるなんて、話が大きすぎて聞こえますよね。

私は、スケジュール表が効果を出す仕組みをモデル化したので、スケジュール表の効果の絶大さを理解できるようになりました。

2番目のハードル「スケジュール表の本当の効果を体験した人が少ない」

どうしてスケジュール表が良いのか理由がわからなくても、スケジュール表の効果を目の当たりにすれば、良さがわかりますよね。

  • スケジュール表はその準備が大変なので、気軽には試せません。
  • スケジュール表は見よう見まねで使っても効果が出ません。
  • 効果を出す秘訣があるのですが、その秘訣を説明した書籍やセミナーがありません。

すると、苦労して準備した割には、効果が出ないので、やった人は次のように考えてしまいます。

  • この子には、スケジュール表が向いていない。
  • スケジュール表とは言葉のできない子どもが使うものだ。

そのように、スケジュール表の大きな効果を知っている人、本当の効果を知っている指導者が少ないのです。多くの人は「スケジュールと視覚支援」を知識としては知っていますが、積極的に使ったり、他の人に強く勧める人が殆どいないのです。

スケジュール表を自宅でやってみて、何度も何度も失敗し、とうとうスケジュール表を使う秘訣を身につけた一部のお母さんだけが、スケジュール表の本当の効果を知っているのです。

3番目のハードル「家庭の苦しみをわかっている人がいません」

自閉症の子どもは、「スケジュールと視覚支援」の無い環境で生活すると、とても扱いにくくなります。すぐにパニックになったり癇癪を起こしたりします。お母さんは、子どもの世話で精一杯です。

一方で、療育機関で子どもが過ごしているときは、そんなには荒れません。療育ルームではある程度の視覚支援がされているので、自閉症の子どもは過ごしやすく、さほど荒れないんです。療育機関の指導者が自閉症の子どもを見ているときは荒れていないので、「自宅ではとても荒れている」ということがわからないのです。

そして、療育機関の指導者も「スケジュール表の準備は大変」ということを知っているので、自宅でスケジュール表を使うことを強くは勧めません。

本当は、スケジュール表を作った苦労以上に、自宅での子どもの生活が楽になるんですけどね。

 

私は、多くの人にスケジュール表の本当の効果を知ってもらい、多くの自閉症の子どもを持つ家庭が楽になって欲しいので、一つずつそのハードルを取り除く活動をしています。

[スライド] スケジュール表解体新書(自閉症の子どもの視覚支援)をご覧ください。

 

子どもの成長と家族のゆとりのために!
古林紀哉

コメント

  1. 武田陽子 より:

    『視覚支援』という言葉は視覚障害者の視覚部分を支援するという言葉です。
    自閉症児・者については『視覚的支援』です。(プロンプトのための視覚的手がかりという事ですよね)
    そこが気になって素晴らしい文章がすんなり受け入れられなかったので是非、直してください。よろしくお願いします。

    • 古林 紀哉 より:

      じっくり読んでくださいまして、ありがとうございます。

      「視覚支援」と「視覚的支援」ですね。

      人それぞれ、その言葉から受ける認識は違うものです。
      自閉症の子どもの世界でも、「視覚支援」という人もいれば「視覚的支援」という人もいます。使い分ける人もいます。

      ABA(応用行動分析)でのトライアル(DTT)で、成功を導くためのプロンプト(手がかり)の一つという意味で、私が「視覚支援」を使っているのではありません。

      多くの人には、「手がかり」程度にしか認識されていないのも、軽視されている一つの理由だと思います。

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