自閉症のお子さんに身につけてほしい、生活スキルはたくさんあります。
ある生活スキルを一つ一つの行動に分解して、行動連鎖で教えていくのが効果的です。
行動連鎖で教えてく時には、【順行連鎖】と【逆行連鎖】の二つの戦略があります。今回は、行動連鎖の概要を説明して、順行連鎖と逆行連鎖の違いを解説します。その後、自閉症の子供に役立つ逆行連鎖の例を説明します。最後にどのくらい役立つのかともっと良い他の方法がないのかについても説明します。
行動連鎖とは
行動連鎖とは、複数の行動がつながって1つの大きな行動になることです。例えば、手を洗うときには、手を濡らす、石鹸をつける、泡立てる、流水で洗い流す、タオルで拭く、などの行動がつながって、手を洗います。
行動連鎖は、目的を達成するために必要な行動を、自然な流れで実行することができます。例えば、歯を磨くときには、歯ブラシに歯磨き粉をつける、歯を磨く、水で口をすすぐ、などの行動が連鎖して、歯を磨くことができます。
行動連鎖は、訓練や練習を重ねることで、よりスムーズかつ効率的に実行することができます。例えば、靴下を履くときには、足に合ったサイズの靴下を取り出す、つま先から靴下を履く、かかとを合わせる、などの行動が連鎖して、スムーズに靴下を履くことができるようになります。
行動連鎖は、私たちが日常生活で行う多くの行動において、当たり前のように行われています。自然に実行されるようになっているため、私たちはあまり気にしていませんが、実は重要な役割を果たしています。
順行連鎖での支援とは
手を洗うスキルを例にしてみましょう。
行動の連鎖は次のようになります。
- 手を濡らす
- 石鹸をつける
- 泡立てる
- 水で洗い流す
- タオルで拭く
順行連鎖では、一連の行動を子どもにやらせてみて、上手くできなくなったら所から後を手伝ってあげる戦略です。支援する側からは、わかりやすいし、一般的な支援方法です。
例えば、子どもが石鹸を泡立てることに生きずまったら、そこから後を手伝ってあげます。
逆行連鎖での支援とは
逆行連鎖では、最初から子どもを手伝ってあげます。手洗いの例では、最後のタスクである「タオルで拭く」を子どもにやらせます。子どもにとっては、最後を自分でやって一連の行動が完了するので、達成感が大きいのです。
最後ができるようになったら、次の機会に手洗いを練習するときは、最初から途中までを手伝ってあげて、最後の「水で洗い流す」と「タオルで拭く」を子どもにやらせます。水で洗い流すことができれば、「タオルで拭く」スキルは既に身につけているので、最後までスムースに流れます。そして、子どもは達成感を得ることができます。
それができるようになったら、次の機会の練習では、手伝う箇所を減らしていきます。最後には、子ども自身で最初から最後までできるようになります。
自閉症の子どもにとっては、逆行連鎖の支援の方が早くスキルが身につくようです。ただし、支援する方としては、逆行連鎖は負担が少々大きいです。
自分で食事ができなかった、私の息子の事例
実は私の三男は8歳の頃まで、自分で食事をすることができませんでした。いつも妻か私が、スプーンやフォークを使って食べさせていました。食事の時間は2倍かかるわけです。三男を食べさせる時間と、自分が食べる時間。
ある日私は、三男がカップラーメンを食べる時、二人羽織のように後ろから、逆行連鎖を使って食べさせてみました。(その頃、私は逆行連鎖と言う手法を知ったばかりでした)。
カップラーメンを食べる時の行動連鎖:
- フォークを持つ
- フォークを麺に挿す
- フォークに麺を絡める
- フォークをカップから上げる
- フォークを口に近づける
- フォークを口の中に入れる
- フォークを口から離し
麺を口に残す - 食べる
最初の一口は、1番から6番を私が手伝います。そして徐々に、私が手伝うこと(後ろの部分)を減らしていきました。なんと、カップラーメンを食べ終わる頃には、三男は自分で食べることができるようになっていました。その日から、我が家の食事の風景が激変ですよ(^-^)
逆行連鎖の支援の難しいところ
例えば、歯磨きスキルを例にしてみましょう。
- 歯ブラシを持つ
- 歯ブラシを蛇口の下に近づける
- 蛇口をひねる
- 蛇口を閉じる
- 歯磨き粉を持つ
- 歯磨き粉のキャップを外す
- 歯ブラシに歯磨き粉をつける
- 歯磨き粉のキャップを閉める
- 歯ブラシを口の中に入れ
- 左上の奥歯の外側を磨く
1、2、3、、、、 - (途中省略)
- 歯ブラシを洗う
- 蛇口を閉める
- 歯ブラシを戻す
この一連の行動も逆行連鎖で支援できそうですよね。そして、早く自分でできるように私たちは期待してしまいますよね。
でもなかなか上手くいきません。それは、一度逆行連鎖で支援しても、歯磨きの次の機会は翌日になってしまうからです。短時間で逆行連鎖の支援することが難しいからです。
一つの行動を分解したときに、行動が少ないようなスキルなら逆行連鎖は上手くいきます。
例えば:
- 服を着る
- 靴下を履く
- 靴を履く
などは、逆行連鎖の効果が発揮されると思います。
もっと良い支援がある
行動連鎖に戻って説明します。
行動連鎖は、特定の目的を達成するために、複数の行動を組み合わせたものであり、一連の流れが自然に実行されるようになっています。そして、途中の行動と最終的な目標がわかっているときに、効果を発揮するのです。
自閉症の子どもは、途中の行動と最終目標を頭の中に抱くことが苦手です。別の言葉で言うと、そのような見通しを立てることが苦手です。誰かに口頭で説明されても、その見通しはすぐに頭から消えていきます。
でも、途中の行動と最終的な姿を、イラストや写真で見せてあげると、ちゃんと理解できるんです。いわゆる、見える手順書を用意してあげると、生活スキルの上達がとても早くなるのです。そんな支援は、視覚支援と言われます。
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