TEACCHカンファレンス参加レポート(自閉症カンファレンスNIPPON 2015)

TEACCH・構造化

8月22日23日、私は自閉症カンファレンスNIPPON 2015を聴講してきました。

自閉症カンファレンスNIPPONというのは、TEACCHモデルに学ぶ実践研究会で、毎年米国ノースカロライナ大学TEACCH部のディレクターを招いて、8月に行われています。今年は、ローラ・クリンガー・ディレクターとゲーリー・メジホフ教授を招いています。ホストは、佐々木正美先生です。

TEACCHのスタートは1965年なので、当時に小児期だった自閉症のお子さんは成人しもう就労を終えてリタイヤが近くなってる方もいるのです。

そいう歴史もあり、今年のカンファレンスは「大人になった自閉症〜TEACCHの成果」という流れで、ライフタイムを通した支援の傾向が強かったですね。もちろんこれから始める方向けの「基礎からの構造化」や「スケジュール」の実践報告もありました。

私の率直な感想は、内容が幅広になってきているため、小児期のお子さんを持つ家庭にとっては、焦点がぼけたり、内容が薄くなってきたということです。今私たちに必要な知識より、将来必要な知識に関する内容が多いという感じです。

朝の開場待ちの列で隣にいたおばちゃんは、「もう毎年来ていますよ。うちの子は高機能で今は30代。昔は保護者がたくさん来ていたけど、最近は保護者は少なくなって、支援の先生が増えたみたいだね。」と言っていました。

TEACCHが始めた「構造化」のアプローチは、実証済みであり、奥も深いです。再度学ぶべきものも非常に多いです。家庭に取り入れることができる構造化の余地もとても多いことが、実践報告から学ぶことができました。

先日の、自閉症カンファレンスNIPPON 2015は、いわばTEACCHカンファレンスです。その二日間で概要がつかめるのは、TEACCHのことであって、自閉症児の療育や支援の手法全体から見れば半分です。半分でも二日間で概要をもうらしてるというのは、とても濃いカンファレンスなんですよ。

TEACCHの哲学・理念は、とても素晴らしいものです。

しかし具体的な方策を考えた時に、2つの課題が私には感じられます。

1)PECSやABAの手法を取り入れれば、TEACCHの方策はもっと改善の余地がある。
2)構造化の方策は、個別の手作業の準備に頼っていて、準備の効率化が進んでいない。

このカンファレンスに参加して、ほとんどの参加者は、
・良い知識を付けた
・子供の成長に期待が持てた
と感じるでしょう。

そして、その新しい考え方の元で、明日からの支援を継続していくでしょう。

私も二日間で構造化の事例を、多くの写真で見ました

今日から構造化を始めるために、どう準備したらいいのか?

しかし、事例を見ただけでは、家庭に構造化を取り入れるのは簡単ではありません。

それが、難しいのはなぜか?

私は二つの壁があると考えています。
1)構造化は、個別にオーダーメードでするものだ、という先入観
2)絵やイラストが準備できない

事例で私たちが目にするのは、チャンピオンデータ、すなわち理想的な状態で実施された結果なんですね。全てオーダーメードで作った後のものです。絵やイラストも準備した後のものです。

習字の「お手本」であれば、まあなんとなく美しい字を真似することができます。構造化の事例だと、支援者や親の準備として、文字は真似ができてもイラストを描くのはできない人が多くなります。事例はお子さん一人一人に最適化されているため、複製できたとしても、我が子には利用価値がよくありません。

私たちにどんなことができるか?

ここ10年で、自閉症という呼び方が自閉症スペクトラム障害に変わってきて、お子さんの特徴も幅広になってきました。

事例で登場する対象児が、幅広なんです。高機能の方、コミュニケーションに問題のない方、文字が理解できる方、女児、などなど。

症状が重く、発語がない男児なんて、事例の中ではごくごく少数派です。

PECSの事例だと殆どが、自閉症の症状が重く、発語がない男児でしょ。

「構造化は個別化が大切。その人に合わせて方策を考える。」
とうのがTEACCHの考え方のようです。

一人一人に合った構造化が違っていたとしても、共通な部分は沢山あるはずです。共通部分を持つという認識を持つと、

  • 共通部分を広げよう
  • 共通部分をもっと使いやすくしよう
  • 共通部分を準備する手間や費用を下げよう

という力が働きます。

例えば、私たちが使っているPCは二つとして同じ使い方、同じデータだけが記憶されているものはありません。個別化されています。しかし、WindowsというOS(「共通ソフト」と言われます)があり、毎年のように機能がアップしていますよね。PCは買ってくれば、自分用にカスタマイズできます。

買ってきてカスタマイズする、そんな構造化でないと、家庭では実践できないと思います。

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