子育てで疲れ切っていませんか?
自閉症の子どもの特徴・特性や、効果的な療育方法を知らないで子育てをすると、家庭の中はグチャグチャになりすぐに限界になってしまいます。子どもにもお母さんにもストレスが溜まらないように気をつけましょう。
このページの後半で、自閉症の子どもの困り事・悩み事を書き出してみました。もしこれらの困り事・悩み事に一つずつ対処してたのでは、お母さんや家族の体力は持ちません。限界を超えます。
自閉症は、先天性の脳機能障害で、
- 社会性の発達障害
- コミュニケーションの障害
- 活動と興味の偏り
の症状が見られます。
子どもの特徴・特性と効果的な療育方法を知って、優しい心で子どもを育ててください。
これまで60年以上も世界中の自閉症専門家が子どもの療育の研究を続けてきました。その成果で、良い療育方法が見つかっています。残念がなら、原因と効果の仕組みが全て解明されてるわけではありません。なぜ、そうすることが自閉症の子どもにとって(そしてお母さんの負担を少なくする)のか理解できない人も多くいます。「なぜ」を考える前に、まずは3つの定石から始めましょう。
- 叱っても罰を与えても、自閉症の子どもができるようになることはありません。子どもにやらせたいこと、身につけて欲しいスキルは、「褒めて伸ばしましょう」(ABA療育方法)。ABA早期集中療育は幼児期に効果が高いものの、学齢期以降になるとABAで伸ばせるスキルは少なくなって行きます。ですが、褒めて伸ばすことは、学齢期や成人になっても重要です。
- 時間の流れ、身支度の順番、生活スキルの手順、社会のルールは、「スケジュール表を使って見せて行動させましょう」。(スケジュールと視覚支援)。この効果を軽視する人が非常に多くいます。詳しく説明していますので、こちらをご覧ください。スケジュールと視覚支援は、幼児期から成人まで自閉症児者には必須の支援方法です。
- 多動行動が多い、昼間の興奮が多い、夜になかなか寝ない、などの症状があるときは、小児精神科医に相談して薬を処方してもらう。(薬物療法)。ただし、薬物療法は自閉症の根本的な治療ではなく、症状を緩和するのが目的です。薬物療法は生活スキルを養う者ではありません。
3つの定石を家庭で行うと、自閉症の子どもの困り事・悩み事の半分以上が自然になくなります。
その後に、自閉症の子どもの特性に応じた接し方をすると、もっと子どもを育てやすくなります。
一つずつ伝える
自閉症の子どもに
- おもちゃを片付けてから、夕食にしましょう。
とお母さんが言ったらどのように行動するでしょうか?
自閉症の子どもは
- おもちゃを片付けないで、先に夕食を食べようとする。
- おもちゃを片付けて、その後で夕食のことは何もしない。
の、どちらかになってしまいます。
自閉症の子どもは、一度に連続した二つの事を言われても、一つしか頭の中に残りません。そのために、後ろ側に子どもの好きな事あれば、真っ先に後ろ側のことをやってしまいます。また、先に指示されたことをやった後に、もう後ろ側のことは行動しようとしません。
自閉症の子どもは記憶力が悪いと思うかもしれませんが、そうでもないようです。自閉症の子どもは物事の同時処理がとても苦手です。一つのことに集中することは、とても得意です。二つのことを言われた時に、一方に集中してしまうがために、一方が終わった後に、もう一つのことを頭の中に復帰させることが苦手なのです。
自閉症の子どもに話しかけるときは、欲張らないで、一つ一つ伝えましょう。連続して子どもに指示するときは、まず、一つの指示だけを出してください。一つのことが終わったら、その時になって初めてもう一つの指示を出してください。自閉症の子どもも、一つの指示をきっちりと理解する能力を持っています。
もし、連続した行動を自閉症の子どもにしてほしいなら、一つ一つの行動を紙に書いて見せてあげるか、絵カードを使ったスケジュール表を使って行動の流れを見せて上げてください。連続した指示であっても、見せてあげることによって、子どもは途中を飛ばしたり、後の行動を忘れたりしないで、順番どうりに行動することができます。スケジュール表にして見せてあげると、途中で指示をしなくても、順番どうりに行動することができます。
具体的な言葉を使う
自閉症の子どもに
- テーブルの上のそれを取って
- お片づけをしなさい
- もう出来た?
とお母さんが言っても、戸惑うばかりです。
自閉症の子供には、
- テーブルの上のお皿を取って、お母さんにちょうだい。
- ミニカーのお片づけをしなさい
- 宿題は終わった?
と具体的に行ってあげれば、ちゃんと理解できます。
自閉症の子どもは、「あれ」「それ」などの代名詞や、省略された言葉がとても苦手です。健常の子どもであれば、話をしているお母さんと共通の認識を持っているので、代名詞を使っても言葉を省略しても話が通じます。自閉症の子どもは、周りの人との共通認識が弱く、何に注目すべきかがよくわからない傾向が強いのです。そのために、「あれ」「それ」などの代名詞を言われても、その代名詞が何を指しているのかわかりません。省略された言葉を聞いた時に、子どもが自分でその省略された言葉を補うことができません。
自閉症の子どもはお母さんや周りの人から、何かを言われて無視しているわけではないのです。ですから、お母さんが何度も何度も同じように言ってあげても、わからないものはわからないのです。曖昧な言葉では、自閉症の子どもはわからないのです。
「きちんと、何々しなさい。」「ちゃんと、何々しなさい。」「そろそろ時間ですよ。」「暗くなったら、何々しなさい。」なども、自閉症の子どもには理解できません。
自閉症の子どもには、代名詞、省略した言葉、曖昧な言葉で話しかけるのではなく、具体的な言葉で話しかけて上げてください。具体的な言葉で話しかけてあげると、自閉症の子どももちゃんと理解して、素直に返答できたり、お母さんの指示どうりに動けるようになります。
否定語を使わないて、肯定語を使う
自閉症の子どもに
- 廊下を走らない
- 今、おやつを食べない
- それをしてはダメ
とお母さんが言っても、どうしてもやってしまいます。
自閉症の子どには、
- 廊下は走りません。廊下は歩きます。
- 3時になったら、おやつを食べましょう。
- 今は、ミニカーで遊びましょう。
というように、肯定語で言ってあげると、ちゃんと理解できます。
自閉症の子どもは、「あれ」「それ」などの代名詞と並んで、否定語がとても苦手です。代名詞であれば、その代名詞が理解できないで、子どもはキョトンとしている程度で、お母さんに迷惑がかかることは少ないと思います(自閉症の子どもにとっては、理解できないので、大迷惑なんですけどね)。しかし、「廊下を走らない」というように否定形で言われると、その中に自分のやりたい「走る」という言葉が含まれているので、自分から静止することはとてもできません。
自閉症の子どもは、「やってはいけないんだったら、どうすればいいんだ」ということが自分の頭の中に思い描けない特性があります。だから、自閉症の子どもの弱点を補ってあげるためにも、否定形ではなく、話をする時には肯定形に置き換えて下さい。
特に自閉症の子どもがやりたいことを止めるような事を言うときは、
- 今やってもいい事は何か?
- 禁止された事は、いつやってもいいのか?
を、伝えて下さい。
そのように肯定形で伝えれば、自閉症の子どもも、素直に従えます。
また、二重否定形はほとんど理解できない事を覚えておいて下さい。
- 食べたくない物は、食べなくてもいいですよ。
- 言いたくない事は、言わないでもいいですよ。
もしも、子どもに言ってあげるなら、
- 食べたい物を、食べなさい。
- 言いたい事を、言いなさい。
ですね。
ちなみに、食事で食べたくないものを残させるには、
「食べたくないものは、このお皿に入れなさい」
と伝えるのがいいと思います。
言葉ではなく見せて教える
自閉症の子どもは、話し言葉を理解するのが不得意です。
文字で書いて見せてあげたり、マーク、イラスト、写真などを使ったカードを使うと、コミュニケーションが取りやすくなります。
話し言葉は子どもの頭の中からすぐに消えていきますが、視覚的に見せてあげたイメージは一瞬で子どもに伝わり、見ている間は長く子どもの頭の中に残ります。
言葉だけではトイレに行くのを嫌がる自閉症の子どもも、「トイレ」の絵カードを見せてあげると、すんなりとトイレに行けるようになります。
多くのお母さんは、「うちの子どもは、言葉がわかるので、見せなくても大丈夫」と思っています。しかし、自閉症の子どもは話し言葉を正しく理解することが苦手です。お母さんから、何度も何度も言われたり、やらなければならない理由を色々説明されても、自閉症の子どもはほとんどは理解していません。お母さんの言葉で子どもが動いているのは、そのことが理解できたからではありません。子どもがお母さんの言ったことに従うのは、そう従えばお母さんが何度もガミガミいうことが止まるからです。今、子どもがお母さんの言ったとうりに動いたとしても、明日になればまたお母さんは何度も何度も言わなければ、子どもは動かないでしょう。
自閉症の子どもは、お母さんから何度も何度も言われる生活をしていると、パニックや癇癪を起こすことが多くなります。
「言葉がわかるので、見せなくても大丈夫」と面倒臭がらないで、文字で書いて見せてあげたり、絵カードを使って見せてあげてください。
自閉症の子どもに、見せてあげて生活を楽にしてあげる方法は、「視覚支援」と呼ばれています。「視覚支援」は自閉症の子どもの療育手法の中で、最も効果の高い支援方法なのです。
できることから教えていく
自閉症の子どもの生活スキルはとてもアンバランスで、一人一人ができる事できない事が違います。
生活スキルは、
- 服を脱ぐ
- 服を着る
- おやつを食べる
- スプーンを使う
- 箸を使う
- 手を洗う
- 靴を履く
と言った、自閉症の子ども本人の身の回りのことを自分でやるスキルです。
まだ出来ないことを教えようとして、お母さんが何度も何度も教えてあげても、それが出来ないで失敗してばかりでは、子どももお母さんも嫌になってしまいますよね。怒りながら教えるのは禁物ですよ。
子どもの身の回りのことで、「もう少しで一人でできそう」になったスキルから教えてあげて下さい。もう少しで一人でできそうな身の回りのことは、子どもも出来るようになる努力が少なくてすみます。簡単な事から先に教えてあげて下さい。あと少しで一人で出来そうなことは、早く一人でできるようになります。
今まで出来なかったことが出来るようになったら、お母さんは満面の笑顔で子どもを褒めてあげて下さいね。
一つのことが子どもが一人で出来るようになると、お母さんはそのことを手伝わないで済むので、育児が一つ楽になります。
予定を見せてあげる
自閉症の子どもは、頭の中で優先順位を考えて行動するのが不得意です。
そのためにいつも、見通しの立たない不安な生活をしています。
周りの人のことを全く気にしないで、自分の好きなことを勝手にやり始めたりします。また、自由時間になると今何をしていいかわからずパニックになることが多いのも自閉症の子どもの特徴です。
そんな自閉症の子どもも、スケジュール表を使って「次に何をすればいいのか」を視覚的に示してあげると、不安なく行動できるようになります。先の予定を見せてあげるツールがスケジュール表です。
一日のスケジュール表が理解できたら、週間スケジュール表、さらに数週間スケジュール表というように要素を増やしていくと、パニックや癇癪も少なくなり生活が安定します。このような方法は「スケジュールと視覚支援」と言われ、自閉症療育の代表手法の一つです。現在では、「スケジュール表と視覚支援」の成果の大きさは世界中の関係者に広く理解されています。
日本の自閉症療育の権威の一人である内山登紀夫先生は、2006年の著書の中で次のように語っています。
「筆者とTEACCHの出会いは1989年にさかのぼる。当時、子どもの精神科病院で幼児病棟を担当してたのだが、入院や外来で出会う子どもの多くが自閉症であった。特に入院を必要とする自閉症の子どもの多くが自傷やかんしゃくなどの問題行動が強く、どのように対処すべきか悩んでいた。支援の手段としては薬物療法と行動療法が主な手段であったが、なかなか効果を上げることができなかった。
1989年にショプラー教授(当時)やメジボフ教授が来日、指導された5日間のトレーニングセミナーに参加し、実際に自閉症の子どもに接しながらTEACCHを学んだ。その時の衝撃は今でも忘れられない。当時の筆者にとっての驚きは、どうして自閉症の子どもにスケジュールや視覚支援がこんなに有効なのかという驚きで、今思えばまさに初心者の驚きだった。」(『本当のTEACCH – 自分が自分であるために』内山登紀夫著、2006年9月21日発行。)
部屋を使いやすくする
自閉症の子どもは、どこで何をすればいいかがわかっていないととても不安になり、パニックや癇癪を起こしやすくなります。
そこで、自閉症の子どもが気持ちよく過ごせるように、自宅の部屋や場所の使い道をはっきりさせましょう。
- 勉強する場所
- 一人で遊ぶ場所
- 家族と一緒に過ごす場所、
- 食事をする場所
と言ったように、部屋や場所ごとに、ここは何をする場所という意味付けをハッキリさせましょう。このような環境を作ることを自閉症療育の専門用語で「場所の構造化」と言います。
日本の家庭事情では、目的ごとに部屋を用意することはなかなか難しい事です。そこで、子どもの部屋ならば、ついたてを使って、「勉強する場所」「好きなおもちゃで遊ぶ場所」「着替える場所」「寝る場所」というように仕切るといいでしょう。
また、自閉症の子どもの目の入る場所に色々な物が置いてあると、視覚的な刺激が多くなり頭の中が混乱してしまいます。部屋の中に物は出来るだけ置かないように、押入れの中にしまったり、棚にしまったり、扉のない棚の場合は布で覆ったりします。
台所はお母さんが食事を作る場所、食卓はご飯を食べるところ、リビングは家族で過ごす場所、というように場所と目的をハッキリさせてください。リビングには勉強道具や着替えなどを置かないようにしましょう。
自閉症の子どもの困り事・悩み事
自閉症の子どもの悩み事は、たくさんあり過ぎで、お母さんや家庭はてんてこ舞いです。
どんなことが困るかと書き出してみると、、、、
(本当はもっとあると思います)
- 言葉の悩み
- 言葉が出ない
- 子どもの要求がわからない
- 親の指示が伝わらない
- 喋れても
- おうむ返しが多い
- 代名詞がわからない
- 長い文章が苦手
- 何度も同じ質問をする
- 返事をしない
- 言葉が出ない
- 生活スキル
- 排泄系
- オムツが取れない
- トイレでウンチを嫌がる
- トイレを汚す
- 歯磨き
- 一人で歯磨きできない
- 歯磨き中に、水遊びをする
- 身支度
- 着替えができない
- 一人でできない
- ぐずぐずしていて、学校に遅れる
- 食事
- 食事が一人でできない
- 偏食が激しい
- 食事時間が一定しない
- 途中で席を立つ
- 人の物を食べる
- お風呂
- お風呂で洗えない
- お風呂で長く遊んでしまう
- 排泄系
- 日常生活
- お母さんが料理しているところに、まとわりつく
- 勝手におやつを食べる
- いつも親が手伝っている
- 親離れしない:親と一緒に寝ている
- 買い物ができない
- 時間が待てない
- 移動
- バスに乗れない
- 電車の中で騒ぐ
- 医療関係
- 医者を嫌がる
- 予防接種を嫌がる
- 虫歯になったが、歯科で座っていられない
- 不適切な行動
- 大きな声を出す
- 床をドンドンする
- 物を投げる
- 物を壊す
- 暴力を振るう
- バタバタと走り回る
- パニックになりやすい
- 癇癪
- 泣きわめく
- 自傷行動
- 他害行動
- 暴れる
- 強度行動障害
- 感覚の問題
- 大きな音が嫌い
- 触られるのがとても嫌い
- 匂いがきになる
- 気候変化に弱い
- 親としての悩み
- 付き合い
- 同じな境遇の仲間がいない
- PTA役員をやりたくない
- 子どもとの接し方
- どんな育児をしていいかわからない
- 叱ったり叩いたりして、罪悪感に陥る
- 自分の時間がない
- 一人で過ごしてほしい
- 子どもを預かってほしい
- 長時間、学校にいてほしい
- 友達と遊びに行きたい
- 他の兄弟に時間を割きたい
- 兄弟が自閉症の子供を手伝ったてほしい
- お父さんも療育に協力してほしい
- 代わりに誰かが家事をしてほしい
- ゆっくり寝ていたい
- 外食をしたい
- 映画やカラオケに行きたい
- 療育関係
- 近くに療育サービスがない
- 専門機関によって言うことが違う
- 家庭での支援
- 部屋が狭くて、整理できない
- 支援グッズの準備が大変
- パパが手伝ってくれない
- 成果について
- 専門機関に勧められてたことができない
- やってみても効果の実感がない
- 付き合い
- 将来の不安
- 喋れるようになって欲しい
- 仕事に就けるようになって欲しい
- グループホームで生活できるようになって欲しい
- お金に困らないで欲しい。
本当は、こんなものでは、済みません。
このページでは、困り事・悩み事をいろいろ書きました。いくつかの対処法も紹介しました。でも、最初に書いたように、一番効き目のあるのは、定石のやり方を取り入れることです。その中でも、2日後から始めることができ、子どもの自立スキルが着々と育っていく方法があります。それは、「スケジュールと視覚支援」です。なぜ、2日後からあなたの家庭にも取り入れることができるのか? その秘密は、こちらをご覧ください。