自閉症とは何でしょうか。多くの人は自閉症のさまざまな特性や行動を知っているかもしれませんが、それらの特性の背後には一つの核心が存在します。
それは、「今、目の前にない物事を心の中で想像する力」の欠如です。この想像力の欠如は、自閉症児が日常生活で直面する様々な課題の原因となっています。
想像力の支援の重要性
しかし、ここで一つ重要な点を理解していただきたいのです。その想像力は、練習や訓練で大きく養うことはできません。もちろん、少しの向上は期待できますが、根本的な部分は変わりません。
そこで私たちができる「想像力の支援」とは、普通児が心の中で自然に無意識に想像していることを、自閉症児には外部から支援者が写真やイラストで具体的に示してあげることを意味しています。
自閉症児の問題行動が増加する背後には、適切な支援の欠如があることを理解することが重要です。年齢とともに問題行動が自然に減少することはありません。そして、その解決の鍵は「想像力の支援」にあります。
適切な支援への道:絵カードの利用
そして、その支援の具体例として「絵カードを使ったスケジュール表」が挙げられます。この方法の有効性は極めて高いにも関わらず、多くの人々、専門家さえもが、その真の価値を見過ごしているのが現状です。 私は、適切な支援を提供するための3つのポイントを特に重視しています。
- 自閉症の根底にあるのは「想像力の欠如」。
- 通常の子供がどのように想像力を使用しているかを理解することが、真の支援への第一歩。
- 既存の支援方法の中には答えが存在する。しかし、その価値を真に理解するには、前の2点の理解が不可欠。
真の支援へのアプローチ
答えはシンプルです。「絵カードを使ったスケジュール表やカレンダー」の日常的な使用です。 しかし、その答えに辿り着くまでの過程や、その背後にある思考を正しく理解することが、真の意味での支援への道となります。決して難しい内容ではありません。
真の支援とは、一般的な常識や先入観を超え、自閉症児の心の中に入り込み、自閉症児と普通児の両方の世界を理解し、そして自閉症児を支援する適切な方法を選択することです。 私の経験や知識を共有しながら、一緒にその道のりを歩みましょう。
自閉症の特性と課題
自閉症の特性に関して、親や支援者が特に困難に感じる点をまとめてみました。
知的な遅れ | 社会性の問題 | 感覚の問題 | |
---|---|---|---|
言葉の遅れ | ○ | ||
生活スキルの遅れ | ○ | ||
運動が苦手 | ○ | ||
手先が不器用 | ○ | ||
コミュニケーションが苦手 | ○ | ○ | |
指示が通りにくい | ○ | ○ | |
こだわりが強い | ○ | ||
変化に弱い | ○ | ||
集団生活が苦手 | ○ | ||
パニック | ○ | ||
癇癪 | ○ | ||
問題な行動 | ○ | ||
多動 | ○ | ○ | |
感覚過敏と感覚鈍麻 | ○ | ||
偏食 | ○ |
この中で、言葉や感覚の問題が複雑で、対策が難しいとされています。しかし、それらを一旦置いて、他の側面に注目したいと思います。まずは、「生活スキルの遅れ」について考えてみましょう。
生活スキルの遅れ
生活スキルの遅れには、さまざまな原因や背景があると考えられます。その中で、どのような支援が求められるのか、「服を着る」を例に説明していきたいと思います。
一般的な子どもの「服を着る」スキルの習得過程
「服を着る」スキルの習得には「想像力」が大きく関与しています。普通児は、まだ着ていない状態の自分と、これから着る服が見えています。
初めは、親が子どもの服を手伝って着せることが多いです。
しかし、成長するにつれて子どもは、服を着る過程で「完全に服を着た後の自分」を心の中で描き始めます。
この心の中のイメージが、実際に服を着た後の姿と一致すれば、親の手伝いは終わりです。
このように、子どもは事前に「未来の状態を想像」することで、目標としての姿を明確にし、徐々に自分だけで服を着るスキルを習得していくのです。
自閉症児の「服を着る」スキルの習得過程
自閉症児の場合、服を着るスキルの習得には特有の挑戦が伴います。
彼らにも服を着る前の自分の姿が認識できる点は普通児と変わりません。そして、最初の段階では多くの親が子どもの服を手伝って着せるのも同様です。
しかし、大きな違いは、自閉症児の中に「完全に服を着た後の自分の姿」を想像する能力が低いか、もしくは存在しないことです。このため、親が服を着せ終えた後でも、自閉症児はその手伝いが完了したと即座に認識することが難しく、ある程度の時間が経過した後で「終わったのかな」と感じることが多いです。
また、心の中での「服を着た後の自分の姿」を具体的にイメージできないため、自分で服を着ることへの試みや練習の効果が期待できません。この結果、自閉症児にとって、服を着るスキルの習得にはより長い時間や回数が必要となる場合が多いです。
ビジュアルサポートによる練習効果の向上
自閉症児が「服を着る」スキルを効果的に習得するための一つの方法は、服を着せる際に「服を着た後の自分の姿」の写真を提示することです。この方法は「ビジュアルサポート」として知られています。
通常の子供たちは自ら「服を着た後の自分の姿」を想像できますが、自閉症児には具体的なビジュアルサポートでその姿を示すことが有効です。
このアプローチを採用することで、自閉症児の練習効果を高め、スキルの習得速度を向上させることが期待されます。
ビジュアルサポートの必要性と活用の限界
ビジュアルサポートを取り入れることは非常に価値があるのに、現在のところ、十分に活用されていないのが現状です。主な原因として以下の点が挙げられます:
- 支援者は「想像力の欠如」を真の課題として意識していない。
- 多くの人が「服を着る行為」は自然に身につくと考えている。
- 時間はかかったが、最終的に自閉症の子どもも自分で服を着ることができたという、経験。
このような状況下で、多くの自閉症児たちが適切なサポートを受けず、成長のチャンスを逸してしまっている可能性が高いです。
おわりに
今回は初回のお話しということで、皆さんが「想像力の欠如」の支援の大切さをすぐに理解するのは難しいかもしれません。しかし、次回もわかりやすい例で紹介していこうと思います。
私と一緒に、適切な支援のゴールを目指しましょう。
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