行動分析学的には、人間には4つの行動パターンがあります。残念なことに、自閉症支援の世界ではそのうち3つの行動パターンしか活用していません。実は4つ目の行動パターンがとても重要なのです。
4つ目を活用すると、自閉症の支援は、簡単で、確実で、より早くなります。例え、専門スキルの乏しい支援者や親御さんであっても。
正確に言うと、4つ目の行動パターンを使っている支援があるのですが、その事実を知らないで使っているのです。だから、上手く行ったり行かなかったり。もったいないですね!
人間の4つの行動パターン
- 無条件反射:何かがあったときに、反射的に起こる行動で、人間も動物も生まれつき出来る行動です。
- 条件反射:刺激が一緒に起こることで、学習していく反射的な行動です。「パブロフの犬」の実験で有名なロシアの生理学者、イワン・パブロフがこの条件反射を発見しました。
- 随伴性形成行動:成功や罰の体験によって、学習していく行動パターンです。自閉症の療育でよく使われるABA(応用行動分析)は、この行動パターンを使っています。
- ルール支配行動:自己暗示によって起こす自発的な行動です。未体験でも行動できるという特徴があります。見通しを立てた行動と言い換えることができます。
1つ目の無条件反射と2つ目の条件反射は、レスポンデント行動に区分されます。3つ目の随伴性形成行動とルール支配行動はオペラント行動に区分されます。
ちょっと残念なことに、
- ABA(応用行動分析)の専門家たちは、レスポンデント行動とオペラント行動の対比をしっかりします。
- しかし、オペラント行動の中を随伴性形成行動とルール支配行動に分けることをしません。その結果、随伴性形成行動の活用が中心になり、ルール支配行動をなおざりにしています。
ルール支配行動は、人間だけに見られる行動パターンです。←ココ重要ですよ。
これらを面白おかしく解説した動画があるので、時間のある方はご覧ください。
ルール支配行動の例
人間には4つの行動パタンーがあることは、なんとなく理解いただけたと思います。
①②③④のうち、人間はどの行動パターンが多いと思いますか?
答えは、④のルール支配行動です。人間の行動の殆どは、ルール支配行動にあたります。
そしていわゆる、社交的な行動というのは、すべてルール支配行動に分類されるのです。例えば、以下の社交的な行動は、すべてルール支配行動に分類されます。
- 相手の話を聞く
- 相手の話題に共感する
- 相手の名前を呼ぶ
- 相手の目を見る
- 笑顔で接する
- ポジティブなコメントをする
- 肯定的な反応をする
- 身振り手振りをする
- 挨拶をする
- 感謝の気持ちを示す
また、典型的で単純な例になりますが、以下の社会的な行動もルール支配行動に分類されます。
- 嫌なことであっても、自分がやるべきことはする。
- やりたいことであっても、他人の迷惑になることはしない。
自閉症児者の行動パターン
もうお気づきだと思います。先の例で挙げた行動は、自閉症児者の苦手とすることばかりです。
自閉症児者は、社交的な行動や社会的な行動が苦手です。
言い換えると、自閉症児者はルール支配行動が少ないのです。(そして、問題が色々発生!)
従来の支援で活用している行動パターン
行動分析の話題になると、真っ先にABA(応用行動分析)を用いた自閉症支援が頭に浮かぶと思います。内容は知らなくても、言葉だけはABAがすぐ頭に浮かぶと思います。
ところが、ABA(応用行動分析)を用いた支援では、活用している行動パータンが、③随伴性形成行動ばかりなのです。随伴性形成行動でいくら支援しても、人間の行動の殆どである④ルール支配行動には近づきません。
TEACCHの構造化という自閉症支援は、実績主義です。理論や行動分析学にはこだわっていません。実は構造化が支援効果を発揮しているのは、自閉症の子どものルール支配行動を促す効果が潜んでいるからなのです。
自閉症児者のルール支配行動(社会的な行動や社交的な行動)を、どう支援していくかは別の記事で解説したいと思います。
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