先日私は、ちょっと驚きました。Twitterを眺めていると、「生徒へのスケジュール表の支援を減らそうとする先生がいて困ってます。」(おそらく保護者)とか「自閉症児への視覚支援は増やしていくものだと再認識しました。」(おそらく先生)というツイートが目に入ったからです。
そこで今回は、なぜ学校の先生は自閉症児への「スケジュールと視覚支援」を減らそうとするのか? なぜそんな先生が未だにいるのか? を考えてみます。
視覚支援のど真ん中とは?
最初に私たちの場合で考えてみましょう。人間は一人だけで暮らしているのではなく、社会の一員として暮らしています。
社会の一員として、もっとも重要なのは、個々人の活動スケジュールの時間を合わせることです。もしも、出勤時間に遅れたら? 会議の時間に遅れたら? 昼食は午後2時から食べたいと我を通したら? 周りの人から見ると、迷惑そのものですよね。時間管理ができていることが社会人の基本です。
私たちは、活動の時間管理を「スケジュール帳」というツールを使って、自己管理しています。高校生の時は、時間割でした。大学生になると、時間割がちょっと複雑になります。社会人になると、1日ごとにスケジュールが違うので、スケジュール手帳や、PCやスマのでのスケジュール管理アプリを使っています。
頭の中で管理しているんじゃ無いですよね。活動スケジュールは、見える形にして管理しています。
視覚支援されるべき内容は、全体の半分以上は自分の活動スケジュールです。
自閉症児への視覚支援は増やしていく必要がある理由
自閉症児への支援領域は、大別すると3つあります。そして、その3つの領域は、違う手法グループによって支援されます。
- 知的な遅れ ← ABA(応用行動分析)療法
- 社会性の問題 ← スケジュールと視覚支援(構造化)
- 感覚の問題 ← 感覚統合的アプローチ
児童も歳を重ねるに従って、社会的に要求される内容が増えていきますよね。社会性の問題に対応する支援が、スケジュールと視覚支援です。だから、歳とともに「スケジュールと視覚支援」での支援を増やしていかないと、自閉症児は対応できません。
練習を繰り返したからといって、スケジュールと視覚支援がなくせるわけではありません。大人だって、スケジュール管理を何らかのツールでしているじゃ無いですか?
もし、スケジュールと視覚支援を減らしてしまうと何が起きるでしょうか? 自閉症の子どもの場合、問題行動やパニックが増えます。
大人の場合、1週間、カレンダーもスケジュール手帳も見ないで生活することを想像してみてください。時々、全ての行動スケジュールをネット上のGoogleカレンダーで管理している大学教授で、カレンダーにアクセスできなくなって、パニックになっている先生がいます。
先生が視覚支援を減らしたい理由
スケジュール表や視覚支援をやりたくない理由には、意識的な(信条的な)理由と、無意識の理由など色々あると思います。
- すでにある物は使うが、新しい状況には新しい視覚支援(スケジュール表や絵カード)が必要。その視覚支援物を作るのが面倒。
- 視覚支援物は見た目が幼稚です(例:絵カード)。幼稚な物を使わないことが成長だと、思っている。
- 卒業後に視覚支援をしてくれる進路先(会社や福祉事業所など)は少ない。残念ながら事実です。卒業後を目指して、視覚支援なしの訓練が必要だと、思っている。
- そもそも、自閉症支援の勉強不足。
確かに視覚支援物を増やすのは手間がかかります。でも、児童生徒のために手間は惜しまないで欲しいな。
幼稚に見えるスケジュール表をやめたいなら、かっこ良いイスケジュール表(大人が使うような手帳、システム手帳、スケジュールアプリ)への移行を指導してほしいな。
3番目の、視覚支援を否定するような進路先は、選ばない方がいいと思います。
まとめ
- 自閉症支援での「スケジュールと視覚支援」は、増やしていく物です。
- 「スケジュールと視覚支援」を正しく理解している先生が増えることを願います。
自閉症の子どもの支援は準備が9割
古林紀哉
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