感想:保育者が行う絵カード作成の誤りおよび不適切な使用方法の分類

感想:保育者が行う絵カード作成の誤りおよび不適切な使用方法の分類

最近インターネットで「絵カード」というキーワードで検索すると、上位表示される報告論文があるので読んでみました。ちなみに、インターネットの検索結果というのはよく入れ替わるものです。

保育者が行う絵カード作成の誤りおよび不適切な使用方法の分類 - 指示カードの誤りに着目して -“、水野智美、教材学研究第26巻(2015) pp.165-172。

率直な感想は、とても内容は良いです。自閉症の視覚支援に明るい人や、子どもに絵カードを使っているお母さんからすれば当たり前のような内容です。著者は保育が専門で、自閉症療育の専門家ではありません。専門外の人がこの分野のペーパーを書くと、トンチンカンな結論を述べることがよくあります。しかしこのペーパーでは、ちゃんとストライクの結論が出てますね。仮説と検証と推論がしっかりしている著者なんだなと感じました。

(追記:この論文は日本教材学会平成27年度の研究奨励賞を受賞しています。)

私がポイントを抜き出してみました。ちょっと長いけど・・・。

  • 保育士が園児を指示する際に絵カードを使うことが増えている。
  • しかし絵カードを示しても、園児が絵カードに反応を示さなかったり、絵カードを嫌がる状況が発生してる。
  • 保育士65名と大学研究者5名の協力で、絵カードが上手く機能しない相談内容とビデオ観察から、絵カード作成の誤りと不適切な使用法を分析した。

相談内容の上位3件

  1. 初めのうちは興味を示したが、しばらくすると指示が通らなくなった。
  2. 絵カードを示しても、意図する行動をしてくれない。
  3. 絵カードを示そうとすると、園児が嫌がるようになった。

絵カード作成の誤りの上位3件

  1. 写真に余計なものが写っている
  2. 一つの絵カードに複数の意味がある。(違う指示でも使っていた)。
  3. 絵カードの内容と実物で、色や形が異なる。

使用する際の不適切な点の上位3件

  1. 指示した後に、園児を褒めない
  2. 禁止のための絵カードを多用する
  3. 言葉を用いないで、絵カードだけを見せている。

著者の結論

  • 絵カードは有効だが、正しく使えない保育士がいる。
  • 保育士は絵カードの知識を得る機会が不足しているので、そのような機会を増やす必要がある。

このペーパーの中で、最も興味深い考察は、「カードを用いた後に褒めていない保育者からは『カードを使用し始めた頃は子どもが保育者の指示を聞くようになったが、1週間もするとカードを見ようともしなくなった』などの話があった。」ですね。私が推測するに、そんな保育者は絵カードを使わないときでも普段から、口頭で指示した後に褒めない、そして、口頭でも禁止の指示が多いのだと思います。

健常な子どもは、指示してその後に褒めない、禁止の指示をする、ということをしていれば保育者の意図通りに、動いてくれたり、やって欲しくないことはやらなくなるようです。発達障害の子どもはそうはいかないので、保育者は、指示力が強いと言われている、絵カードを使ってみた。指示の出し方だけ、口頭から絵カード(または、絵カード+口頭)へ変えてみたが、褒めないことはそのまま、禁止の指示が多いことがそのまま、だったのでしょう。

1週間で絵カードを嫌がるようになった、というと光景が目に浮かんできます。園児にとって、保育士が絵カードを出そうとするのは、やりたくないことをやらされる合図、または、好きでやっていることをやめないといけない合図ですからね。

絵カードたった1枚の提示でも、上手く使えない人がいるという典型的な例だと思いました。このペーパーの範囲外ですが、絵カードは複数枚の提示でも効果を発します。複数枚の方が強力な指示力があります。でもその強力な指示力を発揮させるには、ちょっと知識が必要です。

さて、もう一つの論点として、「絵カードを示しても、意図する行動をしてくれない。」があります。このペーパーでは、その理由は暗に絵カード作成の誤りだと言ってます。

まあ、5年も前の調査なので、カメラやスマホやプリンターの状況が違うことはあるとして、絵カードだったら何でも良いって感じの例も載ってましたね。知識が無いとしても、そこまでお粗末な絵カードはないだろって感じが出てます。そんな絵カードで園児に指示が通ると本当に思ってやったのかなぁ。

このペーパーには書かれていませんが、絵カードを示しても意図する行動をしてくれない理由には、あと2つあると思います。その1:園児は指示は理解したが、嫌な指示だから動きたくない(あるいは、止めたくない)。その2:新しく作ったばっかりの絵カードのため、まだ園児がその絵カードと保育士の意図とが結びついていない。その場合なら、何度か使っているうちに、絵カードの意味を理解するようになります。

さて、指示カードとしての私のまとめです。

絵カードは指示力が強く、保育者やお母さんにとって便利な道具です。しかし、子どもにとって良い道具でなければ、その効果は1週間と持ちません。子どもにとって良い道具であるためには、絵カードが出てくれば「褒められる」、絵カードの指示に従っていれば良いことが起こる、そんな使い方が必要です。

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