どうして、自閉症の子どもには「スケジュールと視覚支援」が有効なのでしょうか?
これまでは「スケジュールで見通しが立つから」と説明されてきました。
でも、本当の理由はまだわかっていません。
いろんな説明がありますが、いまいちパッときません。(例:自閉症の子どもは視覚優位だから。)スケジュールがとても効くということは誰もが認める事実なので、私もどう説明すれば他の人にスケジュールの効果をわかってもらえるか、いくつもチャレンジしてきました。
そして、やっと、しっくりくる理由に行き着きました。
それは自閉症の子どもの弱点を一つに絞り、そして長所を一つに絞ることでした。
- 弱点:頭の中で優先順位をつけるのが苦手
- 長所:順番を見せられると、キッチと守る
弱点:頭の中で優先順位をつけるのが苦手
これを言い換えると
- その時点で子どもの頭の中には、優先順位1番のことだけがある。
- その他の事は、記憶にはあっても、その時点で眼中にない。
ということになります。
そう考えると、子どもは、その時点では自分のやりたいことだけをやることになります。
自閉症の子どもの基本的な特性として「人とのかかわりを持つことが苦手」があります。子どもの頭の中は、自分のやりたいことで占められているので、お母さんから何か言われたり、お友達からアクションを起こされても、自分と人との調整、すなわち優先順位付けは苦手ということになります。
別の基本的な特性として「特定のものにこだわる」があります。自分のやりたい事と、他のことの優先順位をつけるのが苦手なので、自分のやりたい事を続けると、それは「こだわり」と思われてしまいます。
「人の気持ちを読むのが不得意」であるのも、自分の中でもある時点では一つのことしか考えていないので、他の人の事を考えるなんて、ほぼできません。
そんな自閉症の子どもに
- 友達におもちゃを取られた
- ふとしたことで、先生に怒られた
- 普段の勉強の時間が、学芸会の練習の時間に変わった。
ということが起きたらどうなるか想像してみてください。
今一番やりたくてそれをやっていたのに、外から邪魔されたとしても、頭の中で優先順位を考えることが出来ないので、やっていたことをやり続けます。やってはいけない理由を説明された時に、聞いている間はその理由が理解できます。しかし頭の中で「自分のやりたいこと」と「できない理由」の優先順位を調整することは苦手なため、すぐに「自分のやりたいこと」をやろうとします。そして、、、やっていることを外から制止されてしまうと、もう、荒れるしか仕方がありませんね。
時間と状況が変わると、子どものやりたいことも変わってきます。変わっても、その時点で自分が一番やりたいことだけが頭の中にあるのです。
長所:順番を見せられると、キッチと守る
頭の中で順番をつけるのが苦手でも、書かれているものなら順番がはっきりします。
私たちだって、頭の中だけで考えるよりも、紙に書き出した方が考えがまとまりますよね。
自閉症の子どもでも、やることを1番目、2番目と見せられると、優先順位を理解します。
さて、順番を守るとは、どういう意味でしょうか?
答えは、
- 順序を変えない
- 別のことをやらない
ということです。
私たちならば、例えば修学旅行の旅程で、美術館見学、公園で昼食、おみあげ、バスに乗るとなっていた時に、「近くに有名コーヒーショップができたらしいので、そっちに寄ってみよう」とする生徒もいると思います。
自閉症の子どもは、書かれている旅程を変更して行動することはまずありません。
頭の中で優先順位をつけることが苦手なため、書かれている順番(すなわち、自分の目で見た順番)に従おうとします。
でも、初めから書かれている順番に従うことはありませんよ!
子どもに、書かれている順番に従うことを教えてあげるとですね、
スケジュール表をキッチと守るようになります。
見せてあげると、「自分のやりたいこと」と「他人から、やらさること」の順番も理解して、それをちゃんと守るのです。例えば、自分のやりたいことが2つあって、お母さんが子どもにやらせたいことが2つあったとしても、それをスケジュール表に上から一列に並べて見せてあげると、子どもはきっちりと順番を守って行動できるようになるのです。
子どもは、見ている順番に従って、行動している限り、「邪魔された」とか「中断された」という状況にはならないので、荒れることはありません。
スケジュールと視覚支援の原理
私は、自閉症の子どもの
- 弱点:頭の中で優先順位をつけるのが苦手
- 長所:順番を見せられると、キッチと守る
という特性を上手く利用した支援が、
スケジュール表
だと考えています。
だた、単なるスケジュール表と優先順位を見せるスケジュール表の使い方には雲泥の差があります。
優先順位を見せる方法を知らないと、スケジュール表もただの背景や壁紙となってしまいますよ。
5分で概要を理解する、
パニックの多かった自閉症の子どもが、笑顔で動けるようになるスケジュール表の秘密
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