レポート – 自閉症の子どもにとって、スケジュールボードは社会への入り口

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自閉症 スケジュールボード 社会 スケジュール

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私の長男の卒園式で、園長先生が卒園生に向けて、こんな話をしてくれました。その話は、ある卒園生が小学生になってから園長先生に宛てた手紙の内容の一部です。

 「僕は幼稚園の砂場で社会を覚えました。僕が砂場で山を作っていると、その山を友達に壊されました。僕は泣きながら、その子を突き飛ばして喧嘩をしました。ある日いつものように砂場で山を作っていると、お気に入りのスコップを友達に取られてしまいました。僕はとても腹が立って、そその子を叩いてスコップを取り返しました。先生は見ているだけで、何も注意はしなかったと思います。スコップを取り返しても、楽しく遊ぶことはできませんでした。またある日、砂場で遊ぼうとした時に、僕の近くにはスコップがありませんでした。僕が困ってキョロキョロしていると、友達がスコップを貸してくれました。僕は嬉しくて、そこ子と一緒に、いつもより大きな山を作って遊びました。その日から、僕は友達に物を貸してあげたり、一緒に山を作ったり、自分の順番を待つことを覚えたのです。幼稚園の砂場には社会があり、僕は幼稚園の砂場で社会を覚えました。」 

卒園式の当時、私の三男はまだ2歳ででしたが、発達の遅さにはなんとなく気づいてはいました。三男は、長男や次男が通った同じ幼稚園に通うことはできませんでした。

健常な子どもは、お友達との遊びの経験から社会性を自ら養っていきます。あなたの子どもは、砂場でお友達と仲良く遊ぶことができますか? 三男にはそれができませんでした。自閉症の子どもは経験だけでは社会性を養うことができません。しかし、スケジュールボードを上手に使うと自閉症の子どもも社会性を養っていけます。このレポートでは社会の入口についてお伝えします。

自閉症の子どものたった一つの重大な弱点

私は前々回のレポートで、“自閉症の子どもは、頭の中で優先順位をつけることが苦手”、であることが重大な弱点だとお伝えしました(RP-2016-02「スケジュールボードは自閉症の子供にとって頭脳の一部」 2016/09/15)。言い換えると、“自閉症の子どもは、一番やりたいことだけが頭の中にあり、その他のことを頭の中で考えることができない”、ということです。

その弱点のために、子どもが一度言いだすと手がつけられないとか、制止しようとすると癇癪を起こすとか、いろいろ厄介なことが起こります。

この弱点を補う方法は今のところ、“子どもに順番を見せてあげる”ことしかありません。そして、スケジュールボードを使うと「手のつけられない子ども」が「自立できる子ども」になることもお伝えしました。

子どもの社会はどこから始まるのか

もしも人間が世界にたった一人しかいないとしたら、その人は優先順位を持つ必要はないでしょう。その人は、今一番やりたいことをすればいいのです。優先順位の2番目や3番目を気にする必要もありません。やりたいことに飽きたら、その時点で一番やりたいことを始めればいいのです。

でも人間が2人になると、そうはいきません。その2人が、子どもとお母さんだったとしても、子どもが今一番やりたいことをやってしまうと、家庭はグチャグチャですよね。

社会は2人がそれぞれ持っている優先順位の調整から始まります

一番小さくて考えやすい、優先順位の調整は、ご家庭の朝の支度です。例えば、子どもの行動の順番は、朝起きて、トイレに行き、顔を洗い、朝ごはんを食べる、という感じです。これは子どもが希望した順番ではなく、お母さんに都合の良い順番ですね。

朝の支度でさえ優先順位が調整されてるので、子どもの社会はもう朝から始まっているのです。

優先順位の調整を突き詰めると

優先順位の調整の身近な例は、信号機です。信号が青の車線は進め、赤の車線は止まれですね。どの車線も我先にと進むと事故が起こります。結局は、誰かを待たせ、待たされた人もいずれは進めるということです。

優先順位の調整とは、他人の希望を先に通し、自分の希望を後回しにすることです

もう一つ重要なことが残っています。それは、優先順位の調整は一度決めたら、万事がうまくいくわけではありません。時間とともに他人の希望は変わってきますし、自分の希望も変わります。だから、優先順位の調整は適宜、やり続ける必要があります。

優先順位の調整を絶えず行い、関係した人がそれに従う。これが社会なのです。

スケジュールボードは子どもの社会

自閉症の子どもは、頭の中で優先順位をつけることが苦手なので、頭の中に社会がありません。スケジュールボードには、物事をやる順番が表されています。だから、スケジュールボードを見ることで、自閉症の子どもも社会を見ることができるのです。

  • 朝のスケジュールボードは、優先順位が固定されている社会です。
  • 午後のスケジュールボードは、時々普段と違うことが起こるので、子どもにとっては他人の希望が優先されている社会です。
  • 一週間のスケジュールボード(カレンダー)では、子どもがやりたいことを予定することができます。子どもが自分勝手に希望することはできませんが、子どもの希望と他人の希望を調整して予定を置くことができます。自分の希望と他人の希望の調整は、まさに社会性ですよね。

こうやってスケジュールボードを使うと、子どもの社会性が養われるのです。

優先順位の調整を養う方法

スケジュールボードを使わないで、子どもが優先順位を調整する力を養えるでしょうか?

  1. 薬の処方で、優先順位を調整する力を養うことはできません
  2. ABA(応用行動分析)療法でも、“頭の中で複数の物事の優先順位をつける”、力を養うことはできません。二段階教示という、「言われた2つのことを順番に行なう課題」は、とても難易度が高く、多くの自閉症の子どもが習得できません。
  3. 実際の経験を通して、その場その場で、言葉で教えてあげても、同じような場面で教えられたことが守れることはありません

今知られている唯一の方法は、“見えるもので優先順位の調整を行なう”、ことだけなのです。

子どもが優先順位を理解できると

もしも、あなたの子どもが優先順位を理解でき、それを守って行動できると、どんなことが起こるでしょうか?

  • お風呂に入る順番を待てるようになります。
  • 自分の行きたいところと行きたい日を、お母さんにアピールするようになります。
  • 家族の都合で急な予定変更があっても、パニックになることは無くなります。

私の家庭でも、三男はカレンダー上で週末に行きたいところを妻と調整しています。そして、その週末が来るのを楽しみ待っています。

あなたの家庭でも“スケジュールボードというお子さんの社会”を準備してあげてください。

子どもの成長と家族のゆとりのために

古林紀哉

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追伸

このレポートには姉妹編があります。

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