支援者の行動原則

行動支援ボードを使った、自閉症の子どもの行動支援は、自閉症の特性と行動分析学に基づいています。

行動分析学には数多くの原理があります。支援者が、いくつかの重要な原理を身につけていると、自閉症の子どもの行動支援はとてもスムースにできます。逆に、支援者がその原理に逆らうと、ほとんど効果は出ません。

そのような重要な原理を、支援者の行動原則として説明します。家庭のお母さんや専門教育を受けていない支援者にもわかりやすく説明します。ぜひ日頃から、この行動原則に従って、子どもと接してください。

怒らない・怖い顔を見せない

「飴と鞭」と言われるように、子どもを育てていくには、褒めることと、叱ることを混ぜながら行うのが普通です。しかし、自閉症の子どもには、お母さんが怒ったり、嫌な顔を見せたり、罰を与えることが、殆ど効きません。

子どもが行動を始めない時、お母さんが子どもを叱ると、子どもは行動を始めるでしょう。でも、すぐに子どもの行動は止まってしまいます。子どもが問題な行動を始めた時、お母さんが子どもを叱ると、子どもは問題な行動をやめるでしょう。でも、すぐに子どもは問題な行動を始めてしまいます。お母さんは叱り続けないと、自閉症の子どもはお母さんの思い通りにはなりません。

子どもを叱ることや叩くことには即効性があるので、お母さんは子どもを指導できたと勘違いすることもあります。怒ることも時には必要です。でも殆ど間の無駄です。

「子どもを怒らなくても、より良く育てる方法」、「子どもを怒らなくても、問題な行動を減らす方法」がありますので、それをマスターしてください。

当たり前のことを褒める

子どもは褒められると、その行動を良くするようになります。子どもは褒められると、その行動が上達していきます。普通の子どもの場合、お母さんに褒められなくても、多くの生活行動を身につけていきます。どうやら、普通の子どもは自分で自分の行動を褒めるメカニズムが働いているようです。ところが、自閉症の子どもは、普通の生活行動を身につけるのが遅れがちです。どうやら、自閉症の子どもは、自分で自分の行動を褒めるメカニズムがあまり働かないようです。

だからお母さん、当たり前のことができたら、子どもを褒めてあげてください。外から褒めてあげなければ、自閉症の子どもは普通の生活行動が身につきません。お母さんが子どもを手伝った時も、子どもを褒めてください。当たり前の行動ができたら、直ぐに褒めてください。

1日20回、当たり前の行動ができたら、子どもを褒めてください。毎日です。

油断すると、お母さんは、子どもを叱ります。気がつくとお母さんは、「子どもができないこと」、「子どもがダメなことをやったこと」を叱っています。「子どもが当たり前なことができたこと」を褒めてください。そうすれば、お母さんは、子どもを怒らないでいられます。

子どもとの約束を守る(言行一致)

自閉症の子どもの記憶力は物凄いですよ。子どもだと侮ってはいけません。お母さんが言った約束を子どもは覚えています。特に、お母さんが言った約束を守らなかったことを覚えています。

お母さんは、約束なんかしていないと思うかもしれませんね。でも毎日毎日、子どもとの約束をしてますよ。

あなたは、「あとでね!」と子どもに言っていませんか? 子どもの要求に対して、お母さんがやることを先延ばしした約束です。お母さんは、あとで、子どもの要求を叶えてあげてください。「さっきのをやってあげる」と言ってあげてください。子どもは「もう忘れた」と言うかもしれません。でも、お母さんが「さっきのをやってあげる」と言ってあげることが、子どもとの約束を守ると言う意味です。

自閉症の子どもの行動支援は、まずお母さんや支援者が自分で言ったことを自らが行動することです。

自閉症の子どもは、本音と建前なんか理解できません。「こんな時は、ウソを言ってもいい」なんてのも理解できません。お母さんや支援者が約束を守らないと、自閉症の子どもは「”言うこと” と “やること” は違う」、「言葉と行動は違う」ということが刷り込まれていきます。

「言行一致」をお母さんや支援者自らが子どもに見せてください。

ボード上の予定は必ず実行(視行一致)

ちゃんと教えると、自閉症の子どもはスケジュール表の予定をきっちり守ります。言い換えると、自閉症の子どもはスケジュール表で見せられた行動とは別の行動をすることができないのです。

普通の子どもなら、スケジュール表はそのままで、一部の予定だけ別の行動をさせても問題は少ないです。普通の子どもは、またスケジュール表の予定を見に戻ってきます。

自閉症の子どもに対して、自分が見たスケジュール表の予定に対して別の行動をさせると、スケジュール表全体が崩壊します。自閉症の子どもには、「自分が見た予定の中で、好きな行動は、保証される」、「自分が見た予定の中で、嫌な行動でも、必ずやらなければならない」ということを教えていきます。一種の契約ですね。

行動支援ボード上の予定は契約です。契約違反をすると行動支援ボードへの信頼は崩れます。次の契約はもうありません。

視認したものと行動は一致する、ということを守らせてください。「視行一致」です(ただし、「視行一致」はここでの造語です)。

でもご安心ください。実行できない行動は、見せない(行動支援ボード上に貼らない)それでいいのです。

教え方の基本を守る

自閉症の子どもは普通の方法では、なかなかうまく育ちません。いいえ、違います。普通の方法ではうまく育たない子どものことを自閉症と言う、と考えるべきです。

行動支援ボードの教え方は、お母さんや支援者が考えてる普通の方法ではありません。行動分析学の原理に基づいて自閉症の子どもに効果がでた方法を使って組み立てられています。でも勘違いしないでくださいね。難しい方法と言っているわけではありません。逆に、行動支援ボードの教え方は、簡単な方法の寄せ集めに見えます。(注意:行動支援ボードの教え方を普通の子どもに適用すると、効果はちゃんとでますので、誤解なきように。)

簡単に見えるからと言って、教え方のステップを省略して次のステップに進んだり、自分で考えて他のやり方をすることは禁物です。すぐに失敗します。

教え方の基本は守ってください。

でも、お母さん一人一人、支援者一人一人で教え方がブレてしまうのは想定しています。ご安心ください。教え方がある程度ブレても、効果が無駄にならないように「行動支援ボードの教え方」は考慮されています。