自閉症児者のパニック・癇癪の原因とパニック・癇癪を減らす方法

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自閉症児者のパニックや癇癪について

自閉症の子どもは突然、奇声を発したり、泣き出したり、癇癪を起こしたり、他の人に噛みついたりといった「問題行動」を起こすことがあります。それらは「パニック」、「問題行動」、「不適切行動」などと呼ばれます。とりわけ、不安が爆発したような行動は「パニック」と呼ばれます。その場の状況に合わないような行動は「不適切行動」と呼ばれます。子どもに罰を与えても、問題行動がなくなる効果はほとんどありません。自閉症の子どもは、単なるわがままでパニックや不適切行動を起こしているわけではありません。幾つかの原因があり、彼らはそうするしかその状況を回避する術を持っていないと考えるべきです。

パニックを無くす方法には、2つの戦略があります。

  1. パニックの原因を作らないように、親や支援者が配慮する。
  2. パニックを起こさないでも良い力を親や支援者がつけてあげる。

自閉症児者のパニックの例

典型的なパニックとしては、癇癪を起こす、泣きわめく、走り回る、叫ぶ、暴れる、激しく興奮する、ものを投げる、激しく怒るなどがあります。

自分自身を傷つける行動は「自傷行動」と呼ばれ、自分の手に噛み付く、顔を引っ掻く、頭を壁にぶつける、壁に体当たりするなどがあります。

友達や他人を傷つける行動は「他害行動」と呼ばれ、友達を叩く、噛み付く、蹴るなどがあります。

この他に「パニック」までひどくはありませんが、「不適切行動」として自己刺激行動や常同行動と呼ばれるものがあります。

パニックの原因

自閉症の子どものパニックには、原因や理由があり、主なものに以下の3つがあります。

1. 外部からの不快な刺激

  • 不快な音や声が聞こえる。
  • 目障りな物や人が見える。
  • 不快な感触がある。

2. 不安や戸惑い

  • 予期しないことが突然起こった。
  • スケジュールが変更になったが、予定や時間割が理解できない。
  • 今、何をしていいのかわからない。
  • 今やっているや起こっていることが、いつまで続くのかわからない。

3. コミュニケーションの障害

  • 何か欲しいものがある、何かして欲しいことがある、何か気づいて欲しいことがあるにもかかわらず、自分の要求や意思を伝えることができない。
  • 言われていることが理解できない。

パニック・癇癪を減らす方法 – 原因を作らない戦略

一つ目の戦略は、パニック・癇癪の原因を作らないことです。自閉症の子どもは医学的・生理的な障害を持っています。そのため健常な子どもにとっては何でもないことが、自閉症の子どもにとってはパニック・癇癪の原因なります。親や指導者がそのような原因を取り除く配慮をすることで、パニックや癇癪を減らします。

1. 外部からの不快な刺激への対処

自閉症児者は感覚機能の障害を持っています。そのため、外部からの刺激に対して過剰に反応したり、逆に鈍感であったりします。不快となる刺激の代表例は、音による刺激と、視覚的な刺激です。

騒音の大きい場所や、人の多い場所でパニックになることが多い子どもの場合は、音への過剰反応が疑われます。そのような子どもの場合は、イヤーマフ(ヘッドフォンの形をした防音保護具。もともとは射撃訓練や飛行場など騒音の激しい場所で使われてた防音保護具)を着用することで、音の刺激を緩和できます。

視覚的な刺激としては、特定の模様の壁紙や壁の掲示物、片付けられていない備品などがあります。家庭の部屋の中や学校の教室では、余分な物をできるだけ置かないようにしましょう。道具や備品などもロッカーや引き出しにしまうか、簡易カーテンで隠すようにすると、空間からの視覚的刺激を減らすことができます。

2. 不安や戸惑いへの対処

自閉症の子どもの特徴の一つは、「いつも通りのルーチン的な活動は得意」です。一方で、「今、何をやっていいか分からないと、不安になる」、「変化があると戸惑って対応できない」という特徴があります。

そのような不安や戸惑いを無くすには、「今、何をやるべきか」、「次は何をやるのか」、「最後は何をやるのか」という見通しを教えてあげることです。親や支援者が言葉で見通しを教えてあげても、効果がありません。自閉症の子どもに見通しを教えてあげるには、絵や写真や文字を使って、物事の流れを見せて教えてあげます。

自閉症の子どもは、予定の変更が特に苦手です。予定の変更は、絵や文字を使って視覚的に示してあげると、子どもの不安がなくなります。

3. コミュニケーションの障害への対処

しゃべれない自閉症の子どもの場合、自分の欲しいもやして欲しいことを要求することが苦手です。要求するスキルが身についていないと、子どもはかなりのストレスやフラストレーションを抱えることになります。

子どもによっては、言葉を教えることはかなりの時間と労力を要するので、言葉よりも「コミュニケーション」を優先して教えるべきです。絵、マーク、写真、文字などの視覚的な方法でコニュニケーションを教えることが出来ます。「おやつ」「おもちゃ」「ご飯」などの絵カードを準備しておいて、子どもが何かを要求してそうだと思ったら、その絵カードから選ばせて、親と子のコミュニケーションを図ることも出来ます。PECS(ペクス)と呼ばれる絵カードを使ったコミュニケーション方法を教えることも有効です。

パニック・癇癪を減らす方法 – 力を養う戦略

日常的にスケジュール表やカレンダーを使っている自閉症の子どもは、パニックや癇癪を起こすことが殆どありません。そのような支援は、「スケジュールと視覚支援」と呼ばれ、自閉症の療育の代表的な手法です。

しかし、スケジュールを使い始めると直ぐにパニック・癇癪がなくなるものではありません。また、「スケジュールと視覚支援」は親や支援者の準備負担がかなり大きいのも事実です。そのため、殆どの人は「スケジュールと視覚支援」がパニックと癇癪を減らす一番良い方法だとは気がついていません。

自閉症の子どもは、頭の中で物事の優先順位をつけることが苦手です。例えば、子どもが今好きなことをやっていて、それが何かの都合で中断されたとしましょう。自閉症の子どもは中断されたことが理解できません。わけも分からず好きなことが中断される。そしてわけも分からず、やりたくないことをやらされる。もう、子どもはパニックを起こすしかすべがないのです。

スケジュール表の内容は、他人からやらされることと、自分のやりたいことが調整されて順番が定まった結果です。日常的にスケジュール表を使っている子どもは、見ることで優先順位を理解する力が養われます。自分で予定を組むようになると、優先順位を他人に要求する力が養われます。

優先順位を理解したり要求する力がつくと、不快な刺激が発生しても不安定になることが少なくなります。突然の変化が発生しても、戸惑うことがなくなります。

「スケジュールと視覚支援」は、子どもに優先順位を教える支援方法です。優先順位を要求できるようなった子どもは、もはやパニックを起こすことはありません。

スケジュール表でパニックが多かった自閉症の子どもを、笑顔で動けるように変える方法」は、こちらをお読みください。

パニックを起こしてしまった時の対処

パニックが始まったら、おさまるまで見守るのが基本です。無理に抑え込んだり、過度に構うのは逆効果です。角のある家具や尖った物を本人から遠ざける、またはクッションを用意するなどして、危険がないようにし黙って見守るようにします。しばらくして静かになったら、「泣くのをやめて、偉いわね!」と優しく褒めてあげます。また、あらかじめ本人が落ち着ける場所を用意しておいて、パニックが始まったらその場所に連れて行ってあげることも有効です。

参考文献

[1] 「じょうずなつきあい方がわかる自閉症の本」、佐々木正美監修、主婦の友社刊行、2009年3月発行。

[2] 「自閉症スペクトラムへのABA入門-親と教師のためのガイド」 シーラ・リッチマン著、井上雅彦/奥田健次監訳、テーラー幸恵訳、東京書籍刊行、2015年3月発行。

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